医療情報管理センター

診療情報管理室

はじめに

当院では、平成6年7月の開院以来、診療情報管理の充実を強力に進めてきました。
現在では、診療情報管理室の組織の中で、5つの係を持っており、実務統括管理者及び診療情報管理室長の下に、がん登録係、医療情報管理係(DPC担当)、監査統括・統計係、診療情報管理係(診療情報管理データベース構築、開示、スキャンセンター)、病棟配置診療情報管理係が組織されています。構成するスタッフとしては、室長の下に、それぞれの担当リーダーが5名、各担当係に合計診療情報管理士が23名、その他にも事務補助員が3名、業務委託社員等、総員約46名の大所帯で業務に当たっています。
特に、2014年度現在、累計27,702名の診療情報管理士認定者のうち、日本診療録管理学会により全国で64名が診療情報管理士指導者として認定されていますが、当院では2名が取得しており、複数の認定者が存在する病院は、全国でも当院が唯一となっています。
このように、実務としての業務はもとより、活発な学会活動、研究活動にも力を入れており、診療情報管理室職員全員が切磋琢磨し、当院が行うべき医療を側面から支えています。また、院外に向けても、国立病院機構本部主催の研修会の企画や運営、外部に向けても、職能団体の研修会受け入れ(主催)や外部医療機関、大学、専門学校からの実習生受け入れ等も行っています。
さて、診療情報管理とは何か、当院の診療情報管理室とは何かということについて、後者については後述しますが、診療情報管理士については、社団法人日本病院会のウェブサイトに詳しいので、そこから引用しておきます。

診療情報管理士とは

診療情報管理士とは、ライブラリーとしての診療録を高い精度で機能させ、そこに含まれるデータや情報を加工、分析、編集し活用することにより医療の安全管理、質の向上および病院の経営管理に寄与する専門職業です。米国では1932年にMedical Health Informationとして発足し、現在は登録医療情報管理士R.H.I.A(Registered Health Information Administrator)という称号の専門職として養成されています。その他、各国でも同職業の養成が行われています。
現在、医療機関の機能分化と連携、情報の開示、安全の確保、医療費の包括化、医療IT化推進など、新しい医療提供体制の改革が進行しています。
厚生労働省は疾病分類について、国際疾病分類ICD-10の採用・普及、手術・処置分類などについても、一定のコードに準拠する方針を明確にしました。これにより、診療情報管理に必要な環境が一気に進み、診療情報管理士の業務はいっそう重要性を増し、情報、技術としてのIT対応など広い視野と技術の習得、日夜業務の拡大と活躍が期待されています。
平成12年の診療報酬上における診療録管理体制加算の導入に伴い診療情報管理士の必要性に対する意識が高まり、日本病院会の診療情報管理士の通信教育受講生と認定者は大幅に増加しており、「診療録管理士」、「診療情報管理士」認定者総計27,702名が全国各地の医療機関で活躍しています。



一般社団法人日本病院会 診療情報管理通信教育 https://www.jha-e.com/top/abouts/license

当院診療情報管理室の業務について

前述したように、当院の診療情報管理室は、診療情報管理士が中心となって、院内の診療記録(いわゆるカルテなど)を集中して管理し、日常の診療に欠くことの出来ない機能を果たしています。また、診療記録に基づく、診療情報管理データベース、がん登録データベース、DPCデータベースなどを構築管理、利活用し、院内における診療、研究、教育のサポートをしています。また、そのデータベースを活用することにより、当院の円滑な運用にも役立たせています。
特に、昨今、病院情報を公開することによって、患者さんの医療機関選択の一助としていただくことや、医療の透明化を担保すると共に、的確な診療情報を診療に役立てる、そして、安心で安全な医療の提供を行い、患者さんとの強固な信頼関係を構築することが私たちに強く求められております。そのためには、質の高い記録や情報が必須の条件となるため、我々は、厳格な診療記録、診療情報の点検、監査を強力に推し進めており、そのためのスキル向上や体制の構築に努めています。また、電子カルテの導入により、より広い範囲の診療記録の作成が可能になり、その一方で、常に電子カルテ上の記録の迅速な監査が求められております。
以下に、簡単に診療情報管理室の機能について説明したいと思います。

診療情報管理室の役割

診療情報管理室の役割当院診療情報管理室では、当院の運営方針に基づき、日常的な業務を行うにあたり、以下のようなことに着目して業務改善に注力しています。

(1)診療記録の点検、監査、精度改善

当院では、平成6年7月の開院以来、診療行為の指示は、オーダーエントリーシステムを媒介として行われ、コンピュータネットワークで業務が流れています。また、平成22年7月から電子カルテを導入し、診療に関わる記録もコンピュータネットワーク上で共有しています。診療現場においては、医師、看護師、メディカルスタッフ等の医療者によって、発生源における記録や指示入力が行われ、それに基づき、各現場の業務が流れています。さらに、それらの指示内容と共に結果もコンピュータ処理がなされ、ネットワーク上で共有されます。つまり、ネットワーク上の記録の精度がそのまま診療精度に直結することとなります。したがって、その共有すべき記録内容を確認しつつ、診療記録の傷病名・処置手術術式・記載事項・各種添付書類等との間に不整合がないか等を点検し、それに基づき診療情報管理用のデータベース構築を行い、精度向上、精度管理に努めています。さらに、これらに併せて、DPC制度に対応するデータベースや院内がん登録のデータベースも構築し、同様に診療記録との整合性の確認等に注力しています。
これらのデータベース構築を行う一方で、後述する患者さんとの情報共有を進める観点からも、記録精度の担保、診療情報提供すべき相手に対して適正に行われているか、各書類間の傷病名をはじめとした記載事項の乖離はないか等を確認しています。
これらの業務を円滑に遂行するために、詳細は後述しますが、議論の場として、定例の診療記録委員会、DPC委員会等を開催しています。議論の結果は管理診療会議等にて報告し、全職員に対して周知徹底に努めています。

(2)院内各部署に対する診療情報の提供と当院の統一した臨床統計などの作成

診療記録に基づき構築された診療情報管理用のデータベース、DPCデータベース、院内がん登録データベースは、年報、疾病統計の作成、院内再入院調査、臨床評価指標作成、政策医療ネットワーク研究調査、教育等に役立てています。また、診療情報管理データベースを基盤とした臨床統計については、当院の統一した統計として、毎年、年報として取りまとめています。また、DPC制度にかかる調査についても、診療情報管理室が中心となり担う他、診療部門、医事部門等とのコーディネーターを担っています。

(3)患者さん、国民のみなさんへの診療情報提供の推進

当院は、平成12年10月から、全国国立病院の先頭を切って、当時の旧厚生省による診療情報提供のガイドラインにそった、「カルテの開示」を始めました。それ以来、診療情報提供を積極的に行う他、前述したことも含めて必要な業務改善に努めてきました。患者さんへの診療情報提供に関しては、院内規程や取り扱い手順定める他、日常業務の中で、適正に診療記録を検証、監査し、以後の診療記録の充実改善に向けて診療記録委員会や開示委員会に問題点を提議し改善を図っています。

(4)診療記録委員会の目的と運用

診療記録委員会の目的は、診療記録の適正な管理、運用を行い、併せて診療支援、調査研究、教育研修、診療報酬請求等の各種業務の円滑な遂行を図ることです。現在、診療情報管理室が事務局を担い、定例的な委員会として毎月第2水曜日に開催しています。そこでの議論として印象深いものは、平成12年10月からの診療情報提供開始への対応において、患者さん向けの、情報提供に関する意思確認用紙を作成し、「知りたいのか、知りたくないのか」、「誰に説明したらよいのか」等、ご本人の意思を確認することとして情報の取り扱いについての患者さん参加の道を拓きました。まだ個人情報の保護に関する法律が施行される以前の話題です。また、法律の施行後は、包括的同意をより一層明確にかつ厳格に行うために、当院の個人情報保護ポリシーを明確に患者のみな様に伝え、文書による意思確認を厳格化しました。このように記録や情報の精度を上げることと平行しつつ、医療提供の主人公たる患者さんの意向を尊重し、いかにして患者さんとの信頼関係、記録の改善に役立てていくのか、それを考えることも我々、診療情報を扱うプロフェッショナルとしての役割の一つだと考えています。

(5)診療記録開示委員会の目的と運用

診療記録開示委員会の目的は、規程に則り、患者さんを初めとした、申請者個々の申請に関して、適正な申請者であるか否か、提供すべき診療情報の範囲等について審議し、診療情報提供の可否について公平かつ慎重に検討することです。次に、併せて、診療情報の提供に伴って発生した問題点を速やかに解決し、円滑な運用を図ることです。近年の薬害肝炎訴訟が発端となって、当院の前身の旧国立福岡病院の診療記録に関する調査や開示申請が増えました。残念ながら歴史ある旧国立病院の診療記録が全て残っているわけではありませんが、少なくとも過去の適切な管理業務の結果が多くの問い合わせや開示申請のために役立ちました。この歴史を大切にするのはもちろんですが、さらに切磋琢磨し、いつまでも患者さんの期待に応えられるようにしていかなければならないと考えています。

(6)DPC委員会、がん登録委員会の目的と運用

平成10年11月に試行的に導入された、「急性期入院医療の定額支払制度」に端を発する、我が国の診断群分類の導入は、現在、DPC/PDPS制度として普及が進んでいます。その中で、当院は、平成10年11月には全国試行モデル10病院の1病院として、また、平成16年度のDPCへの移行時においては、国立病院唯一の病院として、これらの制度に積極的に取り組みました。これらの取り組みは、既に述べて来たように、当院が開院以来、診療情報管理に力を入れてきたということと無関係ではありません。また、平成20年度からがん診療連携拠点病院にも指定され、院内がん登録を行っておりますが、これも診療情報管理と無関係ではありません。すなわち、質の高い診療記録が存在し、それをベースにした診療情報データベースを構築運用出来ているからこそであり、そのための体制を整備し、人材育成にも力を入れてきました。
現在、DPC委員会は、診療記録委員会と同一日に行い、日常的な問題まで包括して議論する場としています。がん登録については、がん診療連携拠点病院に指定されたことも踏まえてより精度の高いデータベース構築を目的に担当スタッフ一同、切磋琢磨しているところです。両方の委員会とも、診療情報管理室が事務局を担当しています。

(7)今後の課題、担うべきこと

現在、課題と考えることは、大きくわけて3つ。
まず、1つは、平成22年度から導入した電子カルテ導入において、診療情報管理部門における関連業務について、鋭意取り組んで来ました。特に、重点事項として、デジタルベースとなる診療記録の開示への対応、後利用に耐えうる記録やデータを創出するためにどのような考え方をすればいいのか、記録やデータの監査の更なる充実が必要だと考え、継続して改善に取り組んでいるところです。
元々、当院は、平成14年頃の病院情報システム更新時に電子カルテ導入の議論をしたものの、あえて見送った経緯があります。理由は、当時のシステムでは我々の紙ベースで行ってきた診療情報管理以上の環境や業務精度を実現することが出来ないと判断したからです。しかし、時代も変わり、システムの性能も上がり、さらに我々診療情報管理室も体制の充実やスキルアップを実現してきました。そのため、新たな大きな改革を選択することが望ましいと判断しました。
システム導入に当たっては、従来の業務の他にDPCや院内がん登録という比較的新しい業務があります。DPCについては、その前身の日本版DRGの試行的導入以来、データベース構築、運用周りを診療情報管理室が中心になって運用してきましたが、電子カルテの導入を契機として、今後は診療情報管理のプロフェッショナルとして、データベースの解析やそれを用いた診療支援にも関わっていかなければならないと考えています。がん登録については、健康調査として患者さんの現況の把握や内外に向けてのがん情報の提供に力を入れており、特に健康調査については、現況把握だけではなく、調査を行うことによって、最後は、診療記録を基盤とした、患者さんとのより良好な関係の構築、改善を可能にしています。
さて、当院では、患者さんとのより良好な信頼関係の構築を目的として、患者さんへの情報提供についての意思確認などを注意深く行ってきたところです。今後も必要に応じて、随時、運用の見直しを通じ、患者さんだけでなく、医療者にも解りやすく、現状に即したものにすることが今後の継続的な課題と考えています。
また、質の高い医療は、その裏付けとなる良い記録、それに基づく精度の高いデータ、さらにその成果としての情報があってのものです。さらに、全ての基盤となる、記録、データ、情報を共有したり、利活用することが患者さんと我々医療者の間の距離を縮めます。患者さんに質の高い医療を提供し、また、広く国民からの信頼を得るためにはどのように考えるのか、診療情報管理のプロとして継続的に考えていきたいと思います。