赤色骨髄の線量が200ミリグレイ以下の場合、白血病の心配はいりません。白血病の場合、脊椎、胸骨、肋骨、腸骨などに含まれる赤色骨髄にどの程度の線量を受けたかが問題となります。下の表は主なX線検査の際に赤色骨髄が受ける線量です。これらの検査を、1年間に全て受けたとしたら赤色骨髄の合計線量は約30ミリグレイになりますが、この数値は200ミリグレイ以下ですので白血病になることはありません。 また200ミリグレイを越える場合、白血病の自然発生率より少し高い確率で発生することになります。白血病の発生は、その人が生涯に受けた線量に関係しますので、放射線検査は必要最小限のものに限定しなければなりません。(白血病の死亡は人口10万人あたり、男性5.5人、女性3.9人となってます。1993年.国民線量の動向) |
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放射線を受けてから、がんが発生するまでには長い時間がかかります。白血病で5〜10年、その他のがんで10〜生涯かかります。ですから放射線とがんの因果関係を求めるためには長い期間が必要ですので、未だ結論は出ていません。白血病と同じように200ミリグレイ以下では発生しないと考えて良いでしよう。下の表は主なX線検査と皮膚の被曝線量です。ほとんどの検査で200ミリグレイを越えません。 |
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胎児が放射線を受けた場合に問題となる影響は次の5つです。 1) 胎児の死亡(流産) 2) 奇形児の発生 3) 知能障害の子供 4) 小児がんの発生 5) 出生児への遺伝的影響 このうち、流産、奇形児、知恵遅れの子供の発生は(1)妊娠から4ヶ月の間に、(2)100ミリグレイ以上の放射線を胎児(母親では ありません)が受けた場合に発生する可能性があります。次の表は母親の放射線検査と胎児が受ける線量です。 妊娠から4ヶ月間に、例えば大腸透視検査を受けたとしても胎児の線量は80ミリグレイ程度であり、胎児への影響はないと考えて差し支え有りません。大腸透視以外の検査は、もっと線量が少ないですから勿論影響はありません。次にがんと遺伝的影響ですが、100ミリグレイあるいはこれを多少越えても、これらの発生は自然に発生するものより確率は低いですから、これも心配する必要はありません。 それでもまだ少し心配な人は、次のようにして下さい。下腹部が含まれる検査(注腸造影、股関節撮影、腹部撮影など)は月経開始後10日以内にしてもらうのです。これを「10日規則」といいます。しかし、命にかかわるような緊急の場合は勿論検査を受けなければなりません。 |
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将来の子供への影響は生殖線に放射線を受けた場合のみ、問題となります。頭や胸、手足検査では生殖線には放射線を受けません。男性及び妊娠していない女性が生殖線に放射線を受けた場合の影響は2つあります。 1)不妊 2)遺伝的影響 まず不妊です。男性が150ミリグレイ、女性が650ミリグレイ以上の線量を生殖線(睾丸、卵巣)に受けた場合、不妊の可能性が生じますが、通常の検査でこのような線量を受けるケースは殆どありません。 次に遺伝的影響ですが、今まで行われた種々の研究の結果では放射線の被ばくにより、ヒトに対する遺伝的な影響は確認されておりません。しかし猿やマウスの実験では種々の遺伝的な影響が認められておりますので、将来子供が予想される男女の生殖線被曝はできるだけ低くする必要があります。 |
幼児の将来子供の体は成長の過程にあり、体内の細胞は活発に変化していますので、大人より数倍の影響を受けやすいと云われております。しかし子供の撮影に必要な線量はごく微量ですし、線量を少なくする工夫(高感度フィルムの使用、生殖線の防護、照射野の絞り)がなされておりますので、月に1回程度の撮影では心配いりません。自分の体私たち生物は太古の昔から、1年間に2ミリグレイ程度の被曝を 受け続けてきましたが、さしたる影響もなく生きています。今までの研究結果から、年間50〜100ミリグレイの放射線を受けたとしても大きな影響はないということが分かりつつあります。50〜100ミリグレイという線量は大腸透視を受けたときの線量に相当します。その他の検査で受ける線量はこの数値以下ですので、通常病院で行われている検査で、自分の体に影響が出ることはありません。放射線を使いますと病気の診断が早くでき、治療することができますので、必要な検査はしっかり受けましょう。 |
医師、放射線技師など放射線を日常的に使用している人たちの年間線量限度は次のようになっています。なお、この放射線被曝についての項をまとめるに当たっては、草間朋子氏の著書「放射線防護 Q&A 」を参考にさせていただきました。 |
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