泌尿器科

基本方針

泌尿器科疾患の診断および治療にあたっては、技術的には最先端の高度医療を目標としていますが、決して医療者側の考え方ばかりにとらわれず常に患者の皆様の側に立った医療を重視するようにしています。
1)すべての泌尿器科疾患に対応することを原則としています。
2)病診連携を重視して、一般病院や開業医の先生がたと密に連絡を取り合いながら、当院でしかできないような専門的手術・治療を受け持つように心掛けています。
3)高度な治療を行うことを目標にするばかりに陥りがちな患者不在の診療にならぬように、インフォームドコンセントには十分な注意をはらい患者の皆様やご家族と相談しながら治療を選択・進めるようにしています。
4)当院での治療は最終的には当科全スタッフによる話し合いをもとに、患者さんの状況や病状に最適と思われる治療法を提示しております。また、手術療法を含む観血的治療は泌尿器科専門医かつ指導医である上級医師3名が施行または指導のもとに行っております。当院は若い医師たちの教育・研修機関でもあり、臨床研修や泌尿器科専門医育成にもご協力いただきたいと存じます。
5)現在行っている主な先駆的な手術を中心とした治療法

A)腹腔鏡手術、後腹膜鏡手術、ロボット支援手術(開腹せずに内視鏡を用いて行う手術)
  腎細胞癌、腎盂・尿管癌、副腎腫瘍、前立腺癌など
B)腎の保存手術
  病気で腎臓を摘出しなければならない場合、可能であれば腎の一部だけ摘出する方法
  体内灌流法による腎阻血手術(大きな腎腫瘍、腎動脈瘤、腎動静脈婁)
  小切開(小さな創)での腎部分切除(病巣を部分的に摘出し、腎臓の大部分を温存)
C)腸管利用代用膀胱、膀胱再建
  病気で膀胱を摘出したあと、これまでどおり尿道から排尿できるようにする方法です
  がんが尿道まで拡がってなければ、女性でもこの手術を受けることができます。
D)前立腺・膀胱・後腹膜リンパ節の神経温存手術
  手術後の機能障害(勃起障害、射精障害など)を防ぐ手術
E)尿路結石に対するESWL、内視鏡的治療
  体外衝撃波結石破砕(ESWL)は、現在最新型の破砕装置により治療を行っています。
  また、ホルミウムヤグレーザーの導入にて経尿道的な内視鏡手術にて尿路結石砕石の適応が広がりました。
F)前立腺肥大症に対するレーザー治療
  結石砕石にて利用するホルミウムヤグレーザーにより前立腺肥大した部位を経尿道的に核出する手術が
  可能になりました。
G)顕微鏡下手術
  精索静脈瘤手術
H)前立腺癌に対するブラキテラピー(小線源治療)
  2004年5月より治療開始しています
  詳しくは「前立腺癌総合治療センター」をご覧ください

今後の展望

泌尿器科の分野でも、診断・治療技術は目まぐるしく進歩しています。当科の基本コンセプトとして、高度専門医療の推進を努力目標に定め、常に世界的レベルでの診療(診断および治療・手術術式)を心がけています。そのためには随時最新の知識を習得する機会をもつようにしています。また、可能な限り入院期間を最短とするように努力しております。また、情報開示の面からは、大部分の疾患で「クリティカルパス」を導入しています。すなわち、診断がついた時点で治療内容、スケジュールが一目でわかるような治療計画表を患者の皆様にお渡ししてインフォームドコンセントに役立てています。もちろん治療計画表は「根拠に基づく医療(Evidence based medicine)」にて作成されています。
病診連携については地域の病医院(泌尿器科および他科)との連携を深めるよう努力しています。そのために現在行っているのは市内の泌尿器科無床診療所(一部有床)との定期的情報交換を隔月で実施していますし、また年2回当院で市内の泌尿器科の先生方とともに公開抄読会・勉強会を行っております。泌尿器科の病気で悩む患者の皆様がどの病医院を受診しても安心できるような治療ネットワークづくりを作り上げることが最も大切であると考え、現状に甘んじることなく日々努力しているところです。

クリティカルパスとは?

これまで、病院で行われる医療の内容は不透明で外からはわかりにくいと言われてきました。病気にかかって病院を選ばなければならない場合、どの病院に行って診断・治療を受けるかを、私たちは今でも「世間の評判」や「知人の紹介」、「大きな病院」などの理由で決めていたのではないでしょうか。医療をよく家を建てることに喩えるのですが、一生に一度の自分の家を高い金を払って建てようとする場合、「世間の評判」、「知人の紹介」、「大きな工務店」という理由だけで家を建ててくれる工務店を選ぶようなことはしないでしょう。やはり、自分の目でモデルハウスを見学し、数軒の工務店に見積もりや工期、どのような建材を使うか、基礎はどうするか、柱の太さや壁紙の種類等々細かいところまで打ち合わせ、十分すぎるほど検討して最終的に工務店を選んでいると思います。ところが、もっと大切な自分や家族の生命に関わる病院選びは、先程のような理由だけ、あるいはもっとひどい場合は「たまたま目に付いた病院」で選んでいるのです。信頼のおける医師(家庭医:ホームドクター)をもっている方は、その先生が最も勧める病院を紹介してもらえばよいのでしょうが、そのような家庭医をもっていない方が多いと思います。
最近、全国の病院で取り組まれているクリティカルパス(クリニカルパスとも呼ばれています)とは、家を建てるときと同じように医療の内容を事細かく示した工程表のようなものです。これをみるとその病院での治療内容が一目でわかるようになっています。たとえば前立腺癌で前立腺全摘手術を受ける場合、いつ入院してどんな検査をいつ行って、手術後どのような薬を使って、いつから食事を再開して、いつから歩行を開始して、いつ退院するか(どこまで達成できたら退院できるか)などが詳細に記載されているのです。われわれ医療者チームは多くの医療について、このクリティカルパスを作成しています。患者の皆様もこのクリティカルパスを見るのですから、いろんな病院の治療内容がわかり比較することもできます。したがってクリティカルパスを作成するにあたって、患者の皆様が満足でき、かつ効率的な医療を目指しますので、ますます医療の質があがることになります。患者の皆様自身も医療内容を共有しますので治療に積極的に参加できるわけです。すでに一部の病院のクリティカルパスはインターネット上で公開されつつあります。今後の「よい病院選び」はクリティカルパスで医療内容を知り、そして治療成績を含めた臨床指標を知ることで、より自分に合った選択ができるようになってくると思われます。参考までに当科で用いている前立腺全摘手術のクリティカルパスを見ることが出来ます。興味ある方はご覧下さい
http://epath.medis.or.jp)。

前立腺がんと「地域連携クリティカルパス」

九州医療センター泌尿器科では、2007年11月より地域連携クリティカルパスを用いた前立腺がんの地域連携を行っています。前立腺がんの患者またはPSAの値が高く前立腺がんが疑われている方で、経過観察や治療の継続が必要な場合に、日常の診療は地元の「かかりつけ医」で行っていただき、必要なときだけ当院を受診していただくシステムです。これには以下のようなメリットがあります。

連携医療の利点

●日々の診療の待ち時間が短くなります。
●日頃は「かかりつけの先生」に診ていただきますので、気軽に診療を受けることができます。
●通院が便利になります。
●通院時間帯(午後や土曜日など)の制約が少なくなります。
●急変時の救急診療を当院で最優先に受けることができます。
 連携が継ぎ目なく行えるように、また患者さんに泌尿器科医でない「かかりつけ医」に診療を依頼する場合でも不安がないように、患者さん用地域連携クリティカルパス(連携手帳:私のカルテ)をお渡ししています。手帳には、検査・治療の実施間隔や目標、専門医紹介となる目安などが明確に記載されていますし、検査結果などを経時的に書き込んでいくことにより効率的に診療情報を共有することができますので正確で無駄のない医療連携が可能となります。連携開始後5年以上になりますが、これまで600名以上の患者さんに手帳をお渡ししました。連携導入後のアンケート調査でも80%以上の方が連携を勧められてありがたかったと回答しており、連携医との関係もうまくいっているようです。