泌尿器科

治療成績

腎細胞癌

■ 腎細胞癌の診断

腎臓にできる腫瘍の大部分が悪性腫瘍ですが、そのうち腎実質にできる腫瘍の約90%は腎細胞癌です。
一般には腎癌と呼ばれています。腎細胞癌も泌尿器科領域の膀胱癌や前立腺癌と同様に増加傾向にあります。腎細胞癌の症状は、以前は血尿、腹痛、腹部腫瘤と言われていましたが、このような症状が出てから病院を受診した場合にはすでに進行していることが多く、腎癌は予後が悪いと考えられていました。しかし、最近では検診や人間ドックでお腹の超音波検査(エコー検査)が行われる機会が増え、7~8割が比較的早期に発見されるようになったお蔭で腎癌も根治できるようになってきました。是非、健康診断を受ける場合には超音波検査を含んだものを選ぶようにしましょう。

■ 腎細胞癌の治療法

転移を認めない腎細胞癌の治療は、手術による摘出が根治を目指せる標準的治療と言われています。抗癌剤や一般の放射線療法は、根治がほとんど期待できません。何と言っても早期発見、早期手術が第一です。手術には腎臓を全て摘出する根治的腎摘除術や癌を含め腎の一部分のみを摘除する腎部分切除術などがあります。小径の腎細胞癌において腎部分切除術は腎摘除術に比べ腎機能悪化の程度を少なくし、心臓血管疾患の発症を抑えることができ、また、癌再発による生存率には差がないと報告されており、最近では、腎部分切除術が選択される場合が増加しています。また、いずれの手術も多くの場合、手術後の痛みを軽くする目的で小さな傷で手術を行う内視鏡手術(腹腔鏡手術)が行われています。さらにロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術が2016年4月より保険収載されましたので、普及してきています。しかし、全ての方にこの内視鏡手術が用いられるわけではありません。最初に述べましたように、腎細胞癌の治療は手術によって完全に癌細胞を取り除くことが原則ですから、それが内視鏡手術では難しいと予測される、腫瘍が大きいケースや腫瘍の静脈内塞栓を伴うケースでは従来の開腹手術が行われることになります。
標準的治療ではありませんが、手術の代替治療として凍結療法(保険適応)や重粒子線治療(先進医療)なども行われています。
また、手術ができないような進行例や手術後に再発や転移を来した患者さんには、従来、免疫療法としてインターフェロンやインターロイキンなどのサイトカイン製剤が投与されていましたが、1-2割の患者さんに治療効果がみられる程度でした。しかし、2008年頃から、新しい作用機序の抗腫瘍剤(分子標的薬)が登場し、近年では免疫チェックポイント阻害剤という薬剤の使用が可能となり、複数の薬剤による治療が行われ、治療成績が改善しています。

■ 当院における治療実績

当院の腎腫瘍に対する手術実績は診療実績の項を参照ください。
当院では小径の腎細胞癌で腎部分切除術が可能な方にはロボット支援腹腔鏡手術を施行しており、2015年7月より2020年3月までに117例施行しています。重篤な合併症なく経過しています。また、腎部分切除術が困難な方には原則、腹腔鏡下根治的腎摘除術を施行していますが、巨大な癌や静脈内に腫瘍が進展した癌、周囲臓器に浸潤した癌に対しては開腹による根治的腎摘除術を施行しています。特に下大静脈内や心臓まで癌が静脈内を進展している方では当院血管外科、心臓外科と合同で手術を行い、癌を全て摘除する事もあります。
凍結療法や重粒子線治療は当院では施行できませんので、当該施設への紹介となります。
転移をきたした腎細胞癌は上述の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などの適応になりますが、当院では腫瘍内科が治療を担当しています。
以前解析した生存曲線において、癌の大きさが直径7センチ以下で転移がなく腎臓周囲へ癌が拡がってない方(Stage I)では、手術によってほとんど再発なく、元気に過ごしています(最長11年以上)。また、それ以上に進行した方でも確実な手術が行われれば治癒する可能性は十分あります(生存率65〜85%)。腎癌の治療は何より、適確な手術法の選択と確実な手術が大切であると考えています。

膀胱癌

膀胱癌は年々増加しています。膀胱癌の症状は血尿が最も多く、とくに痛みなどの症状を伴わない肉眼的血尿(無症候性血尿)に気づいた場合、早めに専門医を受診することをお奨めします。
膀胱の壁の浅いところにできる表在性膀胱癌は、経尿道的内視鏡手術にて切除する治療がよく行われます。術後数ヶ月から数年後に膀胱内や他の尿路に再発することが少なからずあります。膀胱癌は尿路のあちらこちらに多発・再発する性質をもっているからです。このため、術後に再発予防の目的で抗癌剤やBCGを膀胱内に注入する治療もよく行われています。また、膀胱の壁に深く根を張った浸潤性膀胱癌はさらに進行すれば転移を起こし、命に関わります。浸潤性膀胱癌は経尿道的内視鏡手術で完全に切除できないため、膀胱を摘出する必要性がでてきます。転移を起こせば全身的治療として抗癌剤や免疫チェックポイント阻害剤での薬物治療になります。
いずれにしろ膀胱癌も他の癌と同じように治療が早ければ早いほどよいので、血尿が出たときはできるだけ早く専門医を受診すべきです。また、膀胱炎がなかなかよくならない、あるいは度々膀胱炎になるような方も膀胱癌がある場合があります。このような方も必ず泌尿器科専門医に診てもらうようにしましょう。

■ 浸潤性膀胱癌の治療

膀胱全摘術(通常、男性では前立腺や尿道も合併切除、女性では尿道、子宮、卵巣も合併切除)が標準的な治療です。また、膀胱全摘術に先立って全身的な抗癌剤治療を行えば治療成績を向上できると言われています。膀胱全摘術を施行した場合は膀胱の代わりに腸を使って尿をお腹の外に出す手術(尿路変更)も同時に行われます。これまでは人工肛門のように腸の端を腹壁に出し、集尿袋を貼って尿を集める回腸導管という手術がよく行われていました。癌の状態や患者さんの状態によっては、腸で新しい膀胱をつくって尿道につなげてこれまでどおり尿道から排尿させる術式(自排尿型代用膀胱形成術)も行われています。
膀胱全摘術の治療成績として5年生存率でみるとpT2(筋層浸潤)65-80%、pT3(膀胱周囲脂肪浸潤)30-60%、pT4(周囲臓器浸潤)30-45%、リンパ節転移を認める場合20-30%と報告されています。
放射線治療は膀胱全摘術の代替治療として、通常、抗癌剤との併用で施行することが多いです。治療成績は膀胱全摘術より劣りますが、合併症などで膀胱全摘術が施行できない方などに行うことがあります。

■ 当院における治療成績

膀胱癌に対する手術実績は診療実績の項を参照ください。
表在性膀胱癌に対しては経尿道的内視鏡手術後に上述の膀胱内再発の予防のため、抗癌剤やBCGの膀胱内注入療法を積極的に行っていますが、多くはかかりつけの泌尿器科医へ膀胱内注入療法を依頼しています。
浸潤性膀胱癌では標準治療である膀胱全摘術+尿路変向術を2019年4月よりロボット支援腹腔鏡下手術にて施行しています(2020年6月までに15症例施行)。開腹術に比べて術中出血が極めて少なく、術後の体力の回復が早い印象があります。また、治療成績を向上させるために、多くの症例で術前に全身的な抗癌剤治療を先行します。当院で術前抗癌剤治療後に膀胱全摘術+尿路変向術を受けた方の5年生存率は臨床病期T2N0M0でほぼ100%、臨床病期T3N0M0で75%と非常に良好な治療成績でした。
一方、当院では膀胱全摘術の適応であるが、膀胱全摘せず、膀胱温存を強く希望される方には抗癌剤の動脈内注入療法(足の動脈よりチューブを挿入し、膀胱を栄養している動脈へ直接抗癌剤を注射する方法)を行うことがあります。これは高濃度の抗癌剤が膀胱癌のところに届くため、治療効果が高いといわれています。抗癌剤治療後に画像検査や経尿道的内視鏡手術を行い、癌の残存がないと判断した場合は膀胱を温存し経過観察する方法です。30-40%の方で癌が完全に消失します。癌が消失し、膀胱を温存した方の60%程度は治療後5年で膀胱を温存したまま生存しています。ただし、当院で術前抗癌剤治療後に膀胱全摘術+尿路変向術を受けた方よりは治療成績が劣ります(5年生存率は臨床病期T2N0M0で65%、臨床病期T3N0M0で30%)。
放射線治療は当院では積極的には行っていません。治療後の経過や副作用などよりあまりお勧めできないと考えているためです。
尿路変向術は回腸導管造設術や尿管皮膚ろう術に加えて小腸を用いた自排尿型代用膀胱形成術も行っています(ハウトマン法、スチューダー法など)。回腸導管法に比べて手術時間が長くなりますが、手術前と変わらず尿道から排尿できますので日常生活上の制限が少なくなります。
転移をきたした膀胱癌では全身的な抗癌剤治療を行いますが、治療効果が上がらない場合は当院腫瘍内科にて免疫チェックポイント阻害剤を使用する事もあります。

前立腺癌

前立腺癌の診断・治療および治療成績については「前立腺癌総合治療センター」のコラムで詳しく示していますので「こちら」をクリックしてください。