循環器内科

治療成績

治療成績

心臓カテーテル検査、心血管カテーテル治療

 平成25年の心臓カテーテル検査総数は878例(前年912例)と昨年を下回りました。しかし冠動脈インターベンション(PCI)に関しては366例と昨年の318例を大きく上回りました。この背景にはFFR(fractional flow reserve)の保険償還により血管造影での狭窄度のみならず、physiologicalなアプローチが可能になったことが一つの要因と言えます。また360列CT装置の導入に伴い、外来での冠動脈CT検査にて高い精度をもって責任病変を予想することができるようになり、入院の際に冠動脈造影と同時にPCIを施行するようになったことがもう一つの要因と考えられました。
 当院でのPCIの特徴はイメージングモダリティー(血管内超音波IVUS、光干渉断層装置OCT/OFDI)の高い使用率(85.5%)です。それにより血管径に適したステントの選択、ステント留置後の血管壁への圧着状況を確認することにより良好な治療成績(標的病変再血行再建率TLR 5%以下)を得ています。当院でのもうひとつの特徴として非保護下左冠動脈主幹部病変や慢性完全閉塞病変CTOといった複雑病変に対して積極的に治療を行い、カテーテルの国際学会(TCTAP、CCT)、日本循環器学会や日本心血管インターベンション治療学会にてその治療成績を報告しています。
 PCI 366症例の診断分類は49例(13.4%)がST上昇型心筋梗塞、49例(13.4%)が非ST上昇型心筋梗塞あるいは不安定狭心症、268例(73.2%)が安定狭心症あるいは無症候性心筋虚血でした。手技状況は待機的PCIが317例(86.6%)、緊急PCIが49例(13.4%)でした。緊急PCIは全てST上昇型心筋梗塞でした(図2)。また治療した366例の中で再狭窄病変は44例含まれており、そのほとんどが手術を控えているためにやむを得ずベアメタルステント(BMS)を使用した症例でした。また最近の報告と同様に5年以上経過した第1世代薬物溶出性ステント内の新規動脈硬化による再狭窄も散見しました。
 PCIの内訳であるが経皮的冠動脈ステント留置術が300例{薬物溶出性ステントDESが240例(80%)、ベアメタルステントBMSが60例(20%)}、経皮的冠動脈バルーン拡張術POBAのみが56例、冠動脈血栓吸引術のみが10例であった(図3)。高速回転式冠動脈粥腫切除術PTCRAの使用は37例(10.1%)でした。
 治療による合併症として死亡例は認めませんでしたが、残念ながら1例(0.27%)が緊急手術となりました。その他のデバイス治療として経皮的僧帽弁形成術が3例、深部静脈血栓症に対するIVC filter留置術が19例でした。


不整脈 非薬物治療

 平成25年の不整脈非薬物治療内容と治療成績は以下の通りです。
 電気生理学的検査(EPS)は107例、その内カテーテルアブレーションは102例でした。純粋な電気生理学検査は5例であり、EPSのみを目的としたカテーテル検査は著減しています。平成25年のアブレーション対象疾患内訳および成績は図の通りで、昨年に続き心房細動に対する肺静脈隔離術が最も多い割合(59%)を占め、その比率も増加傾向にあります。心房細動アブレーションの長期を含めた治療成績は安定してきており、特に発作性心房細動に対する根治療法としてアブレーションへの期待の高さを反映していると考えられます。一方で従来カテーテルアブレーションの最も良い適応であったWPW症候群は年々その数が減少しています。
 当院では心房細動アブレーションの合併症対策の一環として、術中術後の血栓塞栓症(特に無症候性脳塞栓症)予防のため従来術直前に中止していた抗凝固薬(ワルファリン)を、術前・術中・術後を通じて継続したまま手術に臨んでいます。このような抗凝固薬管理により出血性合併症を増やすことなく血栓塞栓合併症を減少させるという結果を得ました。このデータを平成25年6月のEuroPACE 2013(アテネ、ギリシャ)で発表し、同年7月には日本不整脈学会のシンポジウムでも発表の機会を得ました。現在抗凝固薬としてワルファリン以外に新規経口抗凝固薬(NOAC)の使用が可能ですが、心房細動アブレーションにおいてもその使用頻度が増えています。しかし周術期合併症に関してはまだ知見が少なく、NOACの有効性と安全性について現在検討中です。
 ペースメーカー植込み術(PMI)は66例(新規40例、交換25例、その他感染等のリード抜去術1例)であり、前年(77例)よりも14%減少しました。新規例、交換例いずれも減少しており、PMIが可能な周辺医療機関の増加と植込み患者紹介の分散化があるのかもしれません。当院におけるペースメーカー植込み術の特徴は、心房・心室中隔ペーシングへの取り組みと全症例スクリューリードの使用です。従来の右室心尖部ペーシングは心機能に悪影響を及ぼす事が明らかとなり、当科では右室中隔にリードを留置する術式を標準としています。心房リードに関しても洞不全症候群では心房細動発生減少を期待して心房中隔にリード留置を行っています。また心房、心室リードにスクリューリードを用いることで術後のベッド上安静を行っていません。これにより手術直後から患者さんは病棟歩行が可能となり、植込み側の上肢固定も必要でなくなりました。また術後のリード移動はほとんど無く、再手術が必要となることはありません。さらには術後の長時間安静によるストレスは軽減され、高齢者では早期のADL回復に大きく貢献しています。
 近年はペースメーカー植込み術予定患者が経口抗凝固薬を服用している症例が少なくありません。従来は抗凝固薬を中止してヘパリン注射薬に置換していましたが、約3年前からヘパリンは使用せず抗凝固薬継続下での手術を行うようにしています。術中の止血を十分に行うことにより、従来に比べ出血性合併症はむしろ減少していることが分かり、今後標準的な抗凝固薬管理になると考えています。
 原因不明の失神例で、心原性失神が疑われる3症例に対して植込み型ループレコーダー(ILR)植込み術を行いました。失神に対する従来のスクリーニング検査では診断困難な症例に対して、この医療器機を皮下に植え込むことにより最長3年間にわたり連続的な心拍モニターが可能となります。再発性失神のケースでは非常に診断精度が上がり、より早期に適切な治療を行うことができるため今後も積極的に利用したいと考えています。
 植込み型除細動器(ICD)は13例に行い前年と同数でした。この内両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)は6例でした。一方単独の両心室ペースメーカー(CRT-P,心臓再同期療法)は1例でした。心臓再同期療法は慢性心不全治療の一つであり、心疾患背景を考慮するとCRT-PよりもCRT-Dを選択する傾向が強いです。当科では疾患背景に加え、ICDの目的が1次予防である場合患者年齢等も考慮して慎重にそれぞれの適応を検討しています。
 平成22年よりICD、CRT-D植込み患者さんの遠隔モニタリングシステムの運用を開始しました。患者さんのご自宅に無線式デバイス交信装置を設置して頂き、Webを経由してデバイスデータ(本体・リード情報のみならず、不整脈の発生や心不全情報等)を自動的にデータサーバーへ送信・蓄積します。我々はこのデータをWeb経由でいつでもチェックすることが可能となり、患者さんの来院を待たずして病状を把握することができます。システムの運用は臨床工学技士の協力下で行われています。年々登録症例は増加しており、現在の約50名の患者さんに対して運用中です。
 平成24年10月に初めてMRI対応ペースメーカーが臨床応用可能となり、現在4社4製品が揃っています。また昨年にはMRI対応ICD,CRT-Dも登場しました。従来ペースメーカー・ICD・CRT-D装着患者さんはMRI検査が禁忌であり、不都合を生じるケースがありました。今後はこれらMRI対応デバイスを植込んでおけば、必要な時にMRI検査を受けることが可能となり、患者さんにとっては大きなメリットです。現在ペースメーカー植込み予定の患者さんのほとんどはMRI対応ペースメーカーを希望されています。将来的にはすべてのデバイスがMRI対応となることが予測され、当科ではいかなるMRI対応デバイスであってもMRI検査に対処できる体制作り目指しています。

表 平成25年度 不整脈検査・治療症例数
EPS アブレーション 肺静脈隔離術 PMI ICD/CRT-D
107 102 60 66 13