循環器内科

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虚血性心疾患の診断と治療


1. 冠動脈CT

冠動脈CTとは、造影剤を注射してCTを撮影し、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患を診断する検査法です。これを用いることで、カテーテル検査を行うことなく正確に診断が可能です。もし狭窄や閉塞などの病変が疑われる場合は、カテーテル検査を行います。当院では、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙などの危険因子がある患者さんでは、このように体への負担の少ない、冠動脈CTによる検査を積極的に行い、不必要なカテーテル検査を減らす努力をしています。


2. 機能的心筋虚血評価

カテーテル検査を行った場合、冠動脈が狭いという見た目だけでは、それが狭心症を起こすかどうかわからない場合があります。このような場合、冠動脈の中に軟らかいワイヤーを挿入し、狭いと考えられる場所の上流と下流で血圧を測定し、狭心症を起こすかどうかを調べることができます。

上の図は、上流である左冠動脈主幹部(LM)から、下流である左前下行枝(LAD)・高位側壁枝(HL)までの評価を行なっています。このように、一見狭いと思われる病変に対してプレッシャーワイヤーによる圧測定(下流と上流の血圧の比)を行うと、下流は0.75と決して高くはなく、この場合は治療する必要がないことがわかります(正常値は0.75以上)。

3. 冠動脈インターベンション

冠動脈インターベンション(図3)とは、主に風船で狭窄部位を広げるカテーテルによる治療です。風船で広げる他に、将来また狭くなるのを防ぐための金属ステントを留置する治療法、歯や骨と同じように動脈硬化が進行した部位を削るロータブレーター(3)、カンナと同じ要領で、狭くなった病変を削り取る方向性粥腫切除術(4)が行われます。
1.経皮的冠動脈形成術

バルーンには、通常バルーンの他、再狭窄予防の薬を血管内に塗布する薬剤コーティングバルーン(DCB)があります。2種類の抗血小板剤服用が、通常バルーンによる治療の場合、2~4週間、DCBの場合、1~6ヶ月となります。

2.経皮的冠動脈ステント留置術

ステントは、バルーン拡張後に、血管が再びしぼんでしまう(リコイル)のを予防するのに有効で、再狭窄予防の薬がステント表面から10日から3か月にわたりゆっくりと浸みだす薬剤溶出性ステント(DES)が、大半の患者さんに使用されます。2種類の抗血小板剤服用が、1-12か月に必要で、血栓症のリスクの高い方には、それ以上の期間の服用を勧めています。

3.ロータブレーター

冠動脈に固い石灰化病変があり、通常のバルーン拡張だけでは、十分な血管拡張が得られないことが予想される場合に、施行します。ダイヤモンドの粉のついた回転子を高速回転させ、歯を削るように、固い石灰化病変を削っていきます。十分なステント拡張が可能となり、再狭窄、血栓症のリスクを減らす大変有効な方法ですが、術後心筋梗塞、血管穿孔の頻度が上がるため、熟練した専門医による施術が行われます。


4.方向性冠動脈粥腫切除術<DCA>

限局的な動脈硬化が冠動脈の太い部分にある場合に、鉋のようなカッターを持ったカテーテルを挿入して、その動脈硬化プラークを削り取ります。十分に病変が削り取られた場合には、ステントの数、長さが減り、ステント留置の必要がなくなることもあります。2種類の抗血小板剤服用期間を短縮できる可能性もあり、有効な治療法です。通常より太いカテーテルを必要とするため、太腿の動脈からのアクセスとなります。術後心筋梗塞、血管穿孔の頻度が上がるため、熟練した専門医による施術が行われます。

4. 慢性完全閉塞病変に対する冠動脈インターベンション

冠動脈が長期にわたって詰まっていた場合、「慢性完全閉塞」と診断されますが、他の血管から、新たな血行路(側副血行路)が発達して、一部の心筋は、完全な梗塞には至っていない状況での血行再建術は有効です。順行性の血流を回復させることにより、狭心症状改善、運動耐用能改善、心機能改善、心不全予防、死亡率低下が期待できます。最も難しい冠動脈形成術の一つですが、現在、その成功率は、80-90%と高く、死亡率0.7%、緊急手術0.7%と通常治療より、若干高い程度で、安全性も確立されています。

文責:村里嘉信