脳血管・神経内科

基本方針

診療基本方針と理念

脳血管・神経内科は脳卒中を全身血管病ととらえ、神経病学としての立場にとどまらず、循環器病学、血栓止血学、老年医学などを背景に包括的な医療を行うことを基本方針としています。脳神経外科、脳血管内治療科、脳神経専門看護、リハビリテーション科、放射線部・臨床検査科とのチーム医療、さらには院内の循環器・神経疾患に関わるすべての科との連携をとり最適で高度な医療を提供するように努めています。また積極的に病診・病病連携を行い地域医療に貢献できるよう取り組むとともに、臨床研究の成果を世界に向けて発信しています。

●Wingを広げる脳血管・神経内科のダイナミックな診療範囲

脳血管障害の診断と治療・予防の発展として、頭頚部血管の超音波診断、超急性期脳梗塞に対するrt-PA静注血栓溶解療法、血管内治療のセンター的存在です。また原因不明の若年性脳卒中の病態解明、脳動脈高度狭窄・閉塞病変に対する手術の適応判断を目的とした、当施設独自の総合的な脳循環精査診療を目的とした専門施設からの紹介も増えてきています。
さらに超高齢化社会の動向にも対応し、「認知症進展予防は生活習慣病の予防から」をコンセプトに、高次脳機能評価、認知機能関連画像検査など神経内科診療研究の範囲を広げています。認知症疾患協力医療機関ネットワークである当院精神神経科と連携し、高度画像診断を用いた早期認知外来(脳血管・神経内科、高血圧内科、総合診療科合同)を開設して早期診断・早期治療の一翼を担う体制を整えています。
(tPA静注血栓溶解療法とは

診療内容

脳卒中は短期間に再発増悪をきたすため、できるだけ早く的確な診断を行い、治療を開始することが何より大切です。そのため脳血管・神経内科と脳神経外科と脳血管内治療科が合同で脳血管グループを作り対応しています。脳血管グループはSCU当直、脳救急当直と24時間オンコールで直ちに脳卒中患者に対応できるシステムをとっております。

●高度画像診断を学習体験し、画像のない場面での病態判断力を養成する

脳血管・神経内科の診断には専門的診察の他に、CT、核磁気共鳴画像(MRI)、脳血流シンチ(SPECT)、脳血管撮影(アンギオグラフィー)など大型の医療機器を使用するものの他に、経頭蓋超音波、頚部血管超音波、心臓超音波などによって心臓および全身の脈管から頭の中まで超音波で血管や血管内の異常を診断します。このほか記憶や言語、軽度認知機能障害(MCI)を評価する高次脳機能検査や脳波などの検査があります。
大型医療機器は他の医療施設で必ずしも活用できるとは限りません。検査の前に常に病態を予測して検査を依頼し、治療への利益を考えて実施するよう心がけています。
(脳血管・神経内科における超音波診断法、神経血管エコー検査対象症例、神経超音波検査、脳血管・神経内科における超音波検査の活用法、 参照*)

* 参照

■脳血管・神経内科における超音波診断法

●血管の評価
 頚部血管エコー
 経口腔血管エコー
 経頭蓋ドプラ(TCD:Transcranial doppler)
 TCCFI(Transcranial color-flow imaging)
 TCCD/TCCS
 (Transcranial color-coded Duplex sonography)
●心臓の評価
 1. 経胸壁心エコー
 2. 経食道心エコー

■神経血管エコー検査対象症例

脳梗塞症例、脳血管障害ハイリスク例(動脈硬化危険因子)
頚動脈狭窄・閉塞症例、大動脈原性脳塞栓症例、奇異性脳塞栓症例
心原性脳梗塞栓症例、椎骨脳底動脈循環不全、頭頸部動脈解離例など
クモ膜下出血症例
脳死症例
心臓外科手術症例(CABG...)・胸部外科手術(肺がんなど)
血管外科手術症例(バイパス術...)の術前精査
脳神経外科手術症例(CEA、バイパス術...)の術前・術後評価
..............etc


■頭頸部血管超音波検査



脳の血管病変を調べる検査
頚部血管エコー検査
狭窄部位


心臓の機能や病変を調べる検査
食道心エコー検査

■脳血管・神経内科における超音波検査の活用

脳梗塞

1.急性期
 閉塞部位・閉塞機序の推定
2.慢性期
 血管病変の観察
 梗塞再発予防・治療方針の決定

心原性脳梗塞

1.急性期
 a.血栓溶解療法の適応
 b.予後の推定
2.塞栓源の検索
3.治療効果の判定
 a.心腔内血栓に対する抗凝固療法
 b.感染性心内膜炎に対する抗生剤
動脈硬化のスクリーニング

1.頚動脈の動脈硬化性病変
2.頚動脈病変から全身の動脈硬化を推測
3.術前頚動脈病変のスクリーニング

頚動脈狭窄症

1.狭窄度の推定
2.プラークの性状
3.頚動脈内膜剥離術前後での評価
4.外頚一内頚動脈バイパス術前後での評価
5.周術期(心臓外科、血管外科)の
 脳梗塞の危険度評価

クモ膜下出血

血管攣縮の有無

脳死

脳死判定



脳卒中の治療には内科治療、外科治療、血管内治療があり、脳卒中の種類によって最善の治療法は異なります。脳血管・神経内科と脳神経外科と脳血管内治療科が三位一体となった脳血管グループは、患者の皆様の状態により最適と考えられる治療を、毎日のカンファレンスで常に議論し模索しています。当センターのチーム医療の基本理念は「共通のコンセンサス(健康寿命の延伸)に基づくテーラーメードな医療」であり、外科治療・血管内治療は、内科医が納得し、チームで方針を決定した医療を実践しています。また脳卒中が疑われるさまざまな患者に対しては救急部と緊密な連携をとり、さらに必要に応じて院内の全科と協議を行い、患者の皆様ひとりひとりに最良最適な医療を常に追求しております。

  ▲図:脳卒中治療


脳卒中の治療は発作からの経過で最適な治療の場が異なります。当院においては急性期の治療が主体で、リスク・病態を評価し、少しでも後遺症、合併症を減らせるような体制をとっていますし、回復期・生活期の転帰改善につながる診療をしています。救急重症例患者は救急病棟(3階東病棟)集中治療室(ICU)で全身管理および集中治療から開始します。また急性期脳梗塞を中心に、脳血管ハイケアセンター(5階西病棟)で脳卒中集中治療室(stroke care unit: SCU)脳卒中専門病棟(stroke unit:SU)へと一貫して治療を行い、良好な治療成績を得ています。この2病棟と専門医療病棟(6階西病棟)は状況に応じて円滑に運用連携しています。急性期治療開始から1週程度の間に、リハビリテーション継続がより長期に必要と判断されれば、当施設と地域医療支援関係を有するリハビリテーション施設と医療連携し、最適な治療を継続しています。
またクリニックや他の専門医療施設からの脳卒中発症リスク・血行動態評価、精密検査を目的とした紹介では治療方針決定後、すみやかにかかりつけ医に医療連携しています。このように脳卒中を急性期から回復期、生活期にかけて、医療連携ネットワークで切れ目のない診療を実践し、住み慣れた地域の視点で包括的医療を実践しています

脳血管・神経内科は高血圧、糖尿病、脂質異常症などの併存症は腎高血圧内科、代謝内分泌内科と、さらに血液疾患、血管炎など特殊な背景を有する脳血管障害は血液内科、膠原病内科などと協議を行い幅広い疾患や病態に対し最適で高度な診療を提供できるシステムをとっています。虚血性心臓病、慢性腎臓病、閉塞性動脈硬化症など心・大血管疾患など複合した血管合併症を有する例も他科と診療連携し、心臓病、大動脈血管病の手術待機患者例へは術前、周術期の脳卒中の予防・治療を目的に、コンサルテーションや脳循環精査を行い、脳保護を視野に入れた手術法選択・内科治療の提案や合併症に対する急性期治療などを支援しています。

福岡県外からの入院患者も多く、ドクターヘリによる静注血栓溶解療法・血管内治療の連携医療、脳血管外科手術を考慮した脳主幹動脈狭窄病変の精査、海外の脳神経専門施設から急性期・亜急性期搬送患者の皆様にも対応しています。

脳血管障害診療のガイドライン

脳卒中の治療指針として、脳卒中合同ガイドライン委員会より最新の『脳卒中治療ガイドライン2009』が発表され、当科でもこのガイドラインの内容を踏まえた診療を行っています。(現在、治療ガイドライン2015に改訂作業中で、作業部会の委員としても当科から参加しています)。また無症候性脳血管障害や血管病変に対しては、日本脳ドック学会が作成した『脳ドックのガイドライン2014』を参考に、健康寿命の延伸を第一とした診療を進め、専門的な内科オピニオンを提供しています。さらに心房細動からの脳梗塞予防については日本循環器学会薬物治療ガイドラインに基づいて診療しています(本ガイドライン改訂作業部会にも当科から委員として参加しています)。

また、当院の治療方針と組織診療については、最近の総説をご覧ください。
「急性期脳梗塞」「慢性期抗血栓療法」「脳卒中急性期医療と診療連携」「心原性脳塞栓症のチーム医療
詳しくは「よくわかる脳卒中のすべて」「脳卒中の再発を防ぐ」もご参照ください。

脳梗塞に関心をお持ちの方は、日本脳卒中協会が策した「脳梗塞とはどんな病気?」をご覧下さい。ゲストとして無料でアクセス可能です。
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