消化器内科

診療実績

肝臓病診療

消化器センターの内科部門(肝臓)を担当しています。週1回のカンファレンスを土台として、肝胆膵外科、放射線科、消化器科、病理部の間の緊密な協力関係により、最適な肝炎、肝がん診療を行える体制が形作られています。
(担当:中牟田、福泉、吉本、山下、樋口、高橋)

A) 肝がん診療
 肝がんの診断と治療が中心的診療活動のひとつであることは言うまでもありません。時に同じ病気であっても受診診療科によって治療方針が異なることも多く、肝がんも例外ではありません。しかしこれは最適な治療を行うためには好ましいことではありません。私どもは毎週木曜日に肝胆膵外科、放射線科、消化器内科、病理部の4科合同でカンファレンスを行い、肝がんの最適な治療方針の決定と症例の検討、術後病理組織の検討を行っています。肝がんは慢性肝疾患を基礎として発生し、しかも高率に再発(新たな発生も含む)する疾患であるため、その治療法の選択に当たっては正確な肝機能の評価が重要であり、さらに長期にわたっての繰り返し治療が必要であるため、外科、内科、放射線科、病理の協力と良好なコミュニケーションなしに診療を行うことは不可能です。センターとしての体制の充実、高性能のCT、MRI、エコー(超音波検査)の導入を始めとする機器の整備のおかげで、当センターにおいては最先端の肝がん診療を行うことが出来るとともに、肝がん治療症例数は全国でもトップクラスの施設となっています。肝がん治療の中で経皮的な局所治療療法であるラジオ波焼灼術やエタノール注入療法を消化器内科が担当しています。

B) 慢性肝炎診療
 B型慢性肝炎は、その病態や年令など個々の状態に応じて経過観察や治療を行います。
無症候性キャリアーにおいては、肝機能の急性増悪や肝細胞がんの出現を念頭において経過観察を行います。やや進行した慢性肝炎や肝硬変では、抗ウイルス療法の導入を必要とすることもあり、年令、ウイルス量、肝生検所見を参考に治療方針を検討いたします。
 C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法は近年、急速な進歩をとげました。2014年に登場したインターフェロンを使用しない内服薬のみの治療により、今まで治療困難であった70歳以上の高齢者や腎不全などの合併症を有する患者さんに対しても安全に治療することが可能となりました。当院でもジェノタイプ1型の患者さんに対してダクラタスビル・アスナプレビル併用療法、レディパスビル・ソフォスブビル併用療法、オムビタスビル・パリタプレビル/リトナビル併用療法、グラゾプレビル・エルバスビル併用療法を合計355名の患者さんに対して施行し、344名(96.9%)のウイルス排除に成功しました。またジェノタイプ2型の患者さんに対しては、ソフォスブビル、リバビリン併用療法を80名の患者さんに対して施行し、76名(95%)の方でウイルス排除に成功しています。2017年11月に発売された最新治療であるグレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法は、ジェノタイプ1型、2型どちらに対しても有効な、はじめての内服薬のみによる治療です。2018年9月時点で85名に導入しており、全国屈指の症例数です。治療を行う際は、個々の患者さんの病態について十分に検討し、ご希望をお伺いして治療方針をご提案します。

C) 肝硬変診療
 肝硬変診療も新しい時代を迎えています。今までは食道静脈瘤や腹水、肝性脳症などの合併症の管理・治療が主体でありましたが、C型代償性肝硬変では、前述の内服薬による抗ウイルス治療が可能となり、90%以上の高い確率でウイルス排除できるようになりました。また、肝臓は代謝の中心臓器であり、栄養治療や運動療法が生活の質を改善するのに重要となっています。

消化管疾患診療

当科では、平成30年度から医長1名、スタッフ3名、レジデント3名、内科専攻医1名の体制で運営しています。内科専攻医は新内科専門医制度に基づき他専門内科をローテーションしながらの勤務となります。放射線科・消化器外科・病理部と密接な協力により、消化管疾患の診断を行うとともに内視鏡を用いた治療を行っています。内視鏡トレーニングセンターと協力しコンピューターシミュレーターを利用した「上部消化管内視鏡基礎トレーニングコース」を行っています。全国的にも少ない先進的なトレーニングコースで教育を行っています。
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、平成18年度に導入して以来、早期胃癌、早期大腸癌、食道表在癌治療に多数施行しており、九州でもトップクラスの実績を挙げています。
高齢患者の増加、呼吸器・循環器疾患患者の増加に伴い、鎮静困難例が増加してきました。鎮静困難例に対しても、非鎮静下での安全でより快適な上部消化管内視鏡検査行うために、平成18年に経鼻内視鏡を導入して以来増加しています。経鼻内視鏡の治療応用として、栄養チューブ挿入、イレウスチューブ挿入、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)に使用しています。
EVIS (endoscopic varicealography during injection sclerotherapy; 静脈瘤造影下硬化療法)は、硬化剤+造影剤を透視下に注入する手技であり、食道壁外シャントや門脈への硬化剤流入をチェックでき重大合併症を予防できます。2008年水谷孝弘が当院に導入して以来、例数を重ねており安定した手技で施行しています。
 平成24年胃十二指腸・大腸消化管ステント保険収載に伴い、隅田頼信が消化管ステントを積極的に導入し、以降増加の一途を辿っており九州で最多数を行っています。大腸イレウスを来した大腸癌でも緊急手術を避けるため、大腸ステントを挿入しイレウス解除後に全身精査を進め待機的手術に至るBridge to Surgery例が増加しています。
内視鏡的治療では、9mm以下の大腸ポリープについては、後出血が少なく外来で施行可能なポリープ切除法として、cold forceps polypectomy、cold snare polypectomyを平成26年より導入し症例を重ねており、大腸ポリープ切除のかなりの数が入院治療から外来治療に移行しました。抗血栓剤内服患者でも後出血が少ないため、積極的に施行しています。(原田)

膵・胆道系診療

当科では膵・胆道疾患を専門とするスタッフ2名、レジデント1名の3人体制で診療を行っています。近年、膵癌の罹患率も経年的に増加しており、部位別癌死亡数では男性で5位、女性で4位となっており、当院を受診される患者数も増加の一途をたどっています。2015年度の当院での入院患者述べ数は膵癌が135例、胆道癌が85例となっています。膵癌の治療成績の向上には、早期診断が非常に重要であり、血液検査やエコー検査などで異常所見のある方に対して、積極的に超音波内視鏡検査(EUS)あるいは必要に応じて内視鏡的膵管造影検査(ERCP)を行い、膵癌の早期発見に力を入れています。
 2016年度の胆膵EUS件数は505件、ERCPは609件となっています。当院でのEUSは観察処置ともにconvex型内視鏡(UCT260)を使用しており、2013年度からEUS-FNAを導入しています(2016年度は87件)。EUS-FNAは膵癌などの膵腫瘍が主な対象ですが、縦隔リンパ節や腹腔内リンパ節、肝腫瘍などに対しても行っています。
 良性膵疾患では、急性膵炎・慢性膵炎・自己免疫性膵炎などの診断治療に加えて、膵管狭窄や膵嚢胞に対する治療内視鏡(膵管ステント、EUS下嚢胞ドレナージ)などを行っています。膵癌治療に関しては、EUS-FNAで病理学的確証を得た上で、外科と連携しながら、Bordeline Resectable膵癌においては術前化学療法を行った後に切除を行い、切除不能膵癌に対しては全身化学療法を行っています。2016年9月〜2017年9月の一年間での化学療法の内訳は、ゲムシタビン+アブラキサン48例、FOLFIRINOX4例、ゲムシタビン22例でした。抗がん剤治療の進歩に伴い、切除不能膵癌でも2年以上の生存例も増加してきています。
 胆道疾患に対しては、総胆管結石の内視鏡治療を始めとして、急性胆嚢炎に対する経乳頭的胆嚢ドレナージ(ENGBD)、胆道鏡(spyglass)による診断、十二指腸乳頭部腺腫及び腺腫内癌に対しては適応を判断した上で内視鏡的乳頭切除術を行っております。また、切除不能胆道癌には全身化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン、TS-1)による治療を行っています。
 膵胆道癌には胆管閉塞や消化管狭窄を合併することが多く、これらに対する緩和医療も重要となります。消化管狭窄に対しては内視鏡的消化管ステント留置を行い、胆管閉塞に対しては胆管ステント留置を行っています。胆道ドレナージはERCPによるステント留置が基本ですが、消化管狭窄合併例や術後症例(胃全摘後や膵頭十二指腸切除後、胆管空腸吻合後)などではERCPが不成功となる場合もあり、これまではPTBDによる外瘻管理となっていましたが、EUSを用いたドレナージ術による内瘻化が2012年度より保険適応となり注目されています。当院でもEUS下胆道ドレナージ術を2015年度以降導入し、2016年度は12件(EUS-HGS:3件、EUS-CDS:1件、EUS-GBD:6件、EUS-RV:2件)、2017年度(4月〜11月)は18例(EUS-HGS:9件、EUS-CDS:2件、EUS-GBD:4件、EUS-RV:3件)と症例数も増加しています。なお、2017年度よりEUS本体(Olympus社EU-ME2 premier)を新規導入しており、今後はより一層の画像診断の向上を目指し、造影EUSやEUS下神経ブロックなどの導入も検討しております。(担当 河邉・加来・肱岡・村上)