消化器内科

診療実績

はじめに

 消化器科は、内科領域の中でも消化器疾患全般-消化管(食道・胃・小腸・大腸)、肝臓、胆道系、膵臓、腹膜疾患を守備範囲とし、病診・病病連携ネットワークも基幹施設として診療を行っています。受け持つ疾患の特性から、日常診療において検査の占める割合が非常に大きく、放射線科との密接な協力の下、消化管造影・内視鏡検査を始めとする各種検査を行うとともに、治療上外科、放射線科とのコミュニケーションを必要とすることも多く、緊密な協力体制を取ることにより、高いレベルでの診断・治療を行うように努めています。
 消化器センター・消化器内科は、消化管、肝胆膵という二つの顔を持っています。もちろん両者が切り離されているわけではありませんが、消化器センター(消化管)(7階西病棟)と消化器センター(肝胆膵)(7階東病棟)の二つの病棟をホームグラウンドとして入院診療を行い、それぞれ消化器外科と肝臓外科のスタッフと密接な連携を作って診療を行っています。一方、外来では月曜から金曜まで2-3名のスタッフが両部門を一つの窓口として診療を行っています。
 中牟田誠(肝臓専門)、原田直彦(消化管専門)、福泉公仁隆(肝臓専門)の三医長を中心とした体制をとっています。

肝臓病診療

 平成15年1月、誕生した肝臓病センターの内科部門を消化器科は担当しています。週一回のカンファレンスを土台として、肝臓外科、放射線科、消化器科、病理の間の緊密な協力関係により、最適な肝癌診療を行える体制が形作られています。肝臓病診療のもう一つの柱が肝臓教室を土台とした医師、栄養管理室、看護師、薬剤師、臨床検査技師との協力体制です。この二本を柱として診療を行っています。(担当:中牟田、福泉、福嶋、吉本、國府島)

A)肝癌診療
 肝癌の診断と治療が消化器センター(肝胆膵)の中心的診療活動のひとつであることは言うまでもありません。時に同じ病気であっても受診診療科によって治療方針が異なることも多く、肝癌も例外ではありません。しかしこれは最適な治療を行うためには好ましいことではありません。私どもは毎週水曜日、肝臓外科、放射線科、消化器科、病理の4科合同で肝臓病センターカンファレンスを行い、肝癌の治療方針の決定と症例の検討、術後病理組織の検討を行い、最適な治療法の選択を行っています。肝癌は慢性肝疾患を基礎として発生し、しかも高率に再発(新たな発生も含む)する疾患であるため、その治療法の選択に当たっては正確な肝機能の評価が重要であり、さらに長期にわたっての繰り返し治療が必要であるため、外科、内科、放射線科の協力と良好なコミュニケーションなしに診療を行うことは不可能です。センターとしての体制の充実、高性能のCT、MRI、超音波断層装置の導入を始めとする機器の整備のおかげで、当センターにおいては最先端の肝癌診療を行うことが出来るとともに、肝癌治療症例数は全国でもトップクラスの施設となっています。肝癌治療の中で経皮的な局所治療療法であるラジオ波焼灼術やエタノール注入療法を内科が担当しています。

B)慢性肝炎診療
 B型慢性肝炎は、その病態や年令など個々の状態に応じて経過観察や治療を行います。
無症候性キャリアーにおいては、肝機能の急性増悪や肝細胞癌の出現を念頭において経過観察を行います。やや進行した慢性肝炎や肝硬変では、抗ウイルス療法の導入を必要とすることもあり、年令、ウイルス量、肝生検所見を参考に治療方針を検討いたします。
また、C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法(インターフェロン治療)は、近年になり急速な進歩をとげました。ペグインターフェロン・リバビリン併用療法により難治性のIb型高ウイルス群においても約50%、II型では80-90%の割合で、C型肝炎ウイルスの排除が可能となりました。2008年4月よりC型慢性肝炎の根治を目的とするインターフェロン治療を受けるすべての方の医療の公的助成制度が新たに始まりました。さらに2011年12月からはテラプレビル(プロテアーゼ阻害剤)・ペグインターフェロン・リバビリン3剤併用療法がI型に対して開始され、それまでの半分の治療期間である24週で70-80%の患者さんが治癒する時代となりました。当科へ受診されたC型慢性肝炎患者さんには、個々の病態について十分に検討を行い、治療方針を考えます。抗ウイルス療法(テラプレビル・ペグインターフェロン・リバビリン併用療法)の必要性や副作用についても十分に説明してご理解いただいた後に、同治療の導入を行っています。当科では、2012年1月より5月の時点で全国でも屈指の症例数である60名以上のC型慢性肝炎患者に対して新規3剤併用治療の導入を行っており、良好な成績を得つつあります。当院では2008年より治療効果のさらなる向上を目指して、高脂血症薬を併用しており、後述のようによい成績を出しておりますが、3剤併用療法においても施行して治療効果のアップが期待されています。

C)肝硬変診療
肝硬変診療も新しい時代を迎えています。食道静脈瘤や腹水、肝性脳症などの合併症の管理・治療が主体でありました、肝臓は代謝の中心臓器であることより栄養治療や運動療法により生活の質の改善を目標にするようになりました。
C型代償性肝硬変では、条件はあるもののインターフェロン治療も可能になりました。

消化管疾患診療

 当科では、平成18年度より新たに消化管専門医長1名、レジデント1名増員し、平成19、20年度もレジデント増員し、計5名の体制となり、平成23年度には長崎医療センターからレジデントの研修を受け入れ6名の体制を行っています。放射線科・消化器外科・病理部と密接な協力により、消化管疾患の診断を行うとともに内視鏡を用いた治療を行っています。平成23年度からは、レジデントを消化器外科、病理部にローテートさせ消化管専門としての総合的育成をスタートしています。内視鏡トレーニングセンターと協力しコンピューターシミュレーターを利用した「上部消化管内視鏡基礎トレーニングコース」を行っています。全国的にも少ない先進的なトレーニングコースで、これまで17名の修了者が出ています。
 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、平成18年から早期胃癌に対しては内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を導入し症例を重ねており、平成22年は59例でした。平成22年からは、より安全なESDを目指して新規デバイスClutch cutterを導入し例数を重ねています。現在は、食道、大腸に対しても積極的に行っています。
 より快適な上部消化管内視鏡検査のために、平成18年に経鼻内視鏡を導入して以来増加し平成22年度は543例に達しました。経鼻内視鏡の治療応用では、平成22年にはイレウスチューブ挿入63例、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)17例を施行しました。
 EVIS (endoscopic varicealography during injection sclerotherapy; 静脈瘤造影下硬化療法)は、硬化剤+造影剤を透視下に注入する手技であり、食道壁外シャントや門脈への硬化剤流入をチェックでき重大合併症を予防できる手技です。2008年より水谷孝弘が当院に導入し、2008年 26例、2009年 37例、2010年 20例と確実に例数を重ねており、過去3年間の硬化療法195例中83例(42.6%)を占める様になりました。近年は進行した消化管癌に対して化学療法や緩和内視鏡などの積極的な治療を行っています。(担当:原田、隅田、原口)

膵・胆道系診療

当科では膵・胆道疾患を専門とするスタッフ2名、レジデント1名の3人体制で診療を行っています。近年、膵癌の罹患率も経年的に増加しており、部位別癌死亡数では男性で5位、女性で4位となっており、当院を受診される患者数も増加の一途をたどっています。2015年度の当院での入院患者述べ数は膵癌が135例、胆道癌が85例となっています。膵癌の治療成績の向上には、早期診断が非常に重要であり、血液検査やエコー検査などで異常所見のある方に対して、積極的に超音波内視鏡検査(EUS)あるいは必要に応じて内視鏡的膵管造影検査(ERCP)を行い、膵癌の早期発見に力を入れています。
 2016年度の胆膵EUS件数は505件、ERCPは609件となっています。当院でのEUSは観察処置ともにconvex型内視鏡(UCT260)を使用しており、2013年度からEUS-FNAを導入しています(2016年度は87件)。EUS-FNAは膵癌などの膵腫瘍が主な対象ですが、縦隔リンパ節や腹腔内リンパ節、肝腫瘍などに対しても行っています。
 良性膵疾患では、急性膵炎・慢性膵炎・自己免疫性膵炎などの診断治療に加えて、膵管狭窄や膵嚢胞に対する治療内視鏡(膵管ステント、EUS下嚢胞ドレナージ)などを行っています。膵癌治療に関しては、EUS-FNAで病理学的確証を得た上で、外科と連携しながら、Bordeline Resectable膵癌においては術前化学療法を行った後に切除を行い、切除不能膵癌に対しては全身化学療法を行っています。2016年9月〜2017年9月の一年間での化学療法の内訳は、ゲムシタビン+アブラキサン48例、FOLFIRINOX4例、ゲムシタビン22例でした。抗がん剤治療の進歩に伴い、切除不能膵癌でも2年以上の生存例も増加してきています。
 胆道疾患に対しては、総胆管結石の内視鏡治療を始めとして、急性胆嚢炎に対する経乳頭的胆嚢ドレナージ(ENGBD)、胆道鏡(spyglass)による診断、十二指腸乳頭部腺腫及び腺腫内癌に対しては適応を判断した上で内視鏡的乳頭切除術を行っております。また、切除不能胆道癌には全身化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン、TS-1)による治療を行っています。
 膵胆道癌には胆管閉塞や消化管狭窄を合併することが多く、これらに対する緩和医療も重要となります。消化管狭窄に対しては内視鏡的消化管ステント留置を行い、胆管閉塞に対しては胆管ステント留置を行っています。胆道ドレナージはERCPによるステント留置が基本ですが、消化管狭窄合併例や術後症例(胃全摘後や膵頭十二指腸切除後、胆管空腸吻合後)などではERCPが不成功となる場合もあり、これまではPTBDによる外瘻管理となっていましたが、EUSを用いたドレナージ術による内瘻化が2012年度より保険適応となり注目されています。当院でもEUS下胆道ドレナージ術を2015年度以降導入し、2016年度は12件(EUS-HGS:3件、EUS-CDS:1件、EUS-GBD:6件、EUS-RV:2件)、2017年度(4月〜11月)は18例(EUS-HGS:9件、EUS-CDS:2件、EUS-GBD:4件、EUS-RV:3件)と症例数も増加しています。なお、2017年度よりEUS本体(Olympus社EU-ME2 premier)を新規導入しており、今後はより一層の画像診断の向上を目指し、造影EUSやEUS下神経ブロックなどの導入も検討しております。(担当:加来、藤山)