肝臓センター

その他の特殊な肝がん治療

肝動注療法 (HAI ; hepatic arterial infusion)

肝がんの治療としてMCNや肝切除を中心にお話ししてきましたが、肝切除やMCNを選択できないような場合にはどういった治療が有効でしょうか? その一つに肝動注療法があります。肝動注療法とは肝がんに対して有効に薬を送って化学療法の奏効性を上げるため、肝動脈にカテーテルの先端を置き、ここから肝臓に向けて薬が流れるようにした治療法です。
 肝動注療法を行うためには、鼠径部(足のつけ根)または前腕より血管内にカテーテルを進め、肝動脈内にこの先端あるいは側孔を置き、鼠径部または前腕に、カテーテルに薬を流し込むための装置(リザーバーまたはポート)を留置する(体の中に埋め込む)必要があります (図 IV 1-(1))。留置したリザーバーを専用の注射針で穿刺し薬を送り込むと、抗がん剤がカテーテルの中を通って、薄まることなく肝臓へ流れる仕組みになっています。
 リザーバーを留置する際の合併症としては、出血、感染、局所麻酔薬や造影剤によるアレルギー反応、動脈瘤形成などがあげられます。
 非がん部肝組織臓に負担がかからないように、毎回少しずつの抗がん剤を使用するのが特徴ですので、副作用は比較的軽微です。しかし、やはり長期に使用しますと、他の化学療法と同様に骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)や肝機能異常、腎機能異常などおよび全身倦怠感、嘔気、食欲不振などがあります。また、胃、十二指腸などの上部消化管へ薬剤が流入しますと胃や十二指腸に難治性の潰瘍を形成することがあり注意を要します。
 このような留置の際の合併症や、その後の副作用に留意しつつ、肝動注療法を行います。皮膚の上からリザーバーに注射針を穿刺し、薬が肝臓へと送り込まれます(図 IV 1-(2)、(3))。治療に要する時間は入院・外来ともにおよそ2〜4時間程度です。治療が終わりますと針が抜かれ、普段どおりの生活が可能です。
 現在、当センターでは入院にて肝動注療法を導入し、副作用がないこと、効果があることを見極めた後には、外来総合治療センターを有効に使用しており、MCNなどの外科治療が不可能な多発肝がん等の患者さんに肝動注療法を行うことで、在宅通院での治療を可能としております(図 IV 1-(4))。現在、肝臓病センター外科だけでも毎週数十名の患者さんがご自宅から治療に通っておられます。


肝動脈化学塞栓療法 (TACE ; transcatheter arterial chemoembolization)

先に述べた肝動注療法は肝動脈にむけてカテーテルとリザーバーを留置する必要がありましたが、本章の肝動脈化学塞栓療法は少し違います。がん細胞に血液を送っている肝動脈にカテーテルを進めるのは同じですが、よりがんに近い部分まで選択的にカテーテルを進めた後に、がんに向けて大量の抗がん剤を注入してがん細胞が増殖するのを抑えます。その後に、血管をふさぐ作用のある物質を注入しがん細胞に血液が流れないようにします。一連のこの作業が終われば、その都度、カテーテルを抜きますので、体の中にモノを埋め込む必要はありません。
 1回きりの治療ですが、一度に大量の抗がん剤が癌に送り込まれ、かつ、その後には血液が流れてこず、つまりがんにとっては兵糧攻めになりますので、治療効果はかなり期待できます。
 治療に際する合併症としては、出血、感染、局所麻酔薬や造影剤によるアレルギー反応、動脈瘤形成などがあげられます。
 副作用は嘔気・嘔吐、食欲不振、発熱、骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)や肝機能異常、腎機能異常などがあります。特に使用する薬剤によっては腎臓への負担が大きいために、抗がん剤が速やかに体外へ洗い流されるように、治療後しばらく多めに点滴する必要があるものもあります。

留置に際する合併症としては、出血、感染、局所麻酔薬や造影剤によるアレルギー反応、動脈瘤形成などがあげられます。
  また、肝動注療法開始後の副作用としては、他の化学療法と同様に骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少)や肝機能異常、腎機能異常などおよび全身倦怠感、嘔気、食欲不振などがありますが、胃、十二指腸などの上部消化管へ薬剤が流入しますと胃や十二指腸に難治性の潰瘍を形成することがあり注意を要します。
  このような留置の際の合併症や、その後の副作用に留意しつつ、肝動注療法を行います。皮膚の上からリザーバーに注射針を穿刺し、薬が肝臓へと送り込まれます(図28、29)。治療に要する時間は入院・外来ともにおよそ2〜4時間程度です。治療が終わりますと針が抜かれ、普段どおりの生活が可能です。

 現在、当センターでは入院にて肝動注療法を導入し、副作用がないこと、効果があることを見極めた後には、外来総合治療センターを有効に使用しており、MCNなどの外科治療が不可能な多発肝がん等の患者の皆様に肝動注療法を行うことで、在宅通院での治療を可能としております(図30)。現在、肝臓病センター外科だけでも毎週70名前後の患者の皆様がご自宅から治療に通っておられます。