肝臓センター

集学的治療

肝がんの治療としてはこれまでに種々の方法が登場してきましたが(図V-(1))、大切なことは一つの治療法にこだわることなく、多種多様の治療をその患者さんの、そのがんの状態に応じて使い分けることだと思います。
 肝細胞がんは背景にウイルス性肝炎や肝硬変、アルコール性の肝障害などがあり、いったんがんを発症した肝臓には他にもがんの予備軍が隠れていると考えても過言ではないため、初発の肝細胞がんをきちんと治療したとしても、その後繰り返し再発してくる可能性が十分にあります。また、他の臓器のがんが肝臓に転移してきた場合も同様です。もともとがんのあった臓器から血液の中に流れ出し肝臓に流れ着いたがん細胞は有限でなく、無数にあったはずと想定しなくてはなりません。
 そのため、再発を早い段階で発見して、繰り返し治療を行っていく必要がありますが、例えば、初回は大きく肝切除が可能であった方でも、その後の再発は残った肝臓の働きが不十分であるために肝切除が選択できない場合も少なくありません。また、2回目には前回よりも多発再発する場合もあります。その様なときにMCNを選択するのか、あるいは肝動注療法を選択するのか、あるいはPEITやRFAを選択するのか、、その状態に応じて適切な治療法を決定することが大切です。当肝臓病センターでは内科、外科、放射線科、病理医が参加する合同カンファラスがあり、個々の患者さんに対して最も適した治療法を話し合い、各科の枠を超えてより良い治療法を選択することが可能です(図V-(2))。
 最良最適な治療を選択し、これを繰り返すことで、患者さんに少しでも長生きして頂けますようにと努力していますが、当センターでは、肝細胞がんの方では、5年以上生存していただくためには平均2.6回の外科治療が必要でした。そして、途中からは化学療法を継続していただく必要がある方も少なくありませんでした。  外科的治療(肝切除やMCN)、内科的治療(RFA、PEIT、肝動注療法、全身化学療法など)、放射線科による治療(肝動脈化学塞栓療法、放射線治療など)を総合的に組み合わせて治療すること、これを“集学的治療”といいます。最適な治療を繰り返すことこそが大切であり、当センターのように各科の垣根が低く、個々の科をまたがって治療法が選択できることは肝臓がんと戦っていく中で非常に大きな強みであると考えています。


参考文献



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