前立腺癌総合治療センター

当院での治療実績

局所前立腺癌に対する手術数および放射線治療数

局所前立腺癌根治治療数
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
 前立腺全摘
  開腹 7 0 1 1 0
  腹腔鏡下 0 0 0 0 0
  ロボット支援下 49 70 68 59 68
 HDR-BT 19 18 10 14 7
 LDR-BT 9 8 3 2 1
 計 84 96 82 76 76
HDR-BT:高線量率組織内照射
LDR-BT:低線量率組織内照射

前立腺全摘術(開腹・腹腔鏡下・ロボット支援下)

2013年10月にダヴィンチロボットシステムが導入され、2013年12月よりロボット支援前立腺全摘術を開始しました。現在は特別な事情がない限りロボット支援腹腔鏡下手術で行っています。
当院における前立腺全摘手術のスケジュールと治療実績を示します。
入院・治療は治療計画書(クリティカルパス)に沿って進行します。開腹手術の場合は手術約2~3週間前に外来にて400〜800mlの自己血を貯血しますが、ロボット支援腹腔鏡下手術では出血量が少ないため、自己血貯血は行っていません。ロボット支援腹腔鏡下手術の手術時間は3-4時間で、骨盤内リンパ節郭清術を併用する場合は5-6時間が目安です。入院は原則手術予定日の前日、手術後1~2日目に歩行できます。手術後6日目に尿道のカテーテル(管)を抜きます。手術後8~9日で退院となります(退院の基準:手術創治癒、身体に合併症なし、排尿に支障なし)。退院後は通常の日常生活が可能です。ロボット支援腹腔鏡下手術は従来の開腹術より術後の痛みが軽度で社会復帰も早いのは事実です。
近年、手術例数は開腹・腹腔鏡・ロボット支援手術を含めて年間50〜70例施行しています。

リスク分類別の手術単独治療成績(2015年データ解析)


開腹手術の治療成績を示しています。腫瘍マーカーのPSAが上昇して、PSA再発が相当数生じていますが、前立腺癌が原因で死亡される方はこの20年で数名です。また、ロボット支援腹腔鏡下手術の中長期成績は解析できていませんが、摘出標本の顕微鏡検査の結果を基にすると開腹手術時より完全切除の割合が増加しています。前立腺周囲の広範な切除やリンパ節郭清の範囲を広げており、手術成績が改善する可能性は十分あります。

放射線療法

小線源療法

当院では、前立腺癌の根治的放射線治療装置として、低線量率組織内照射(ヨウ素による永久留置小線源療法)および高線量率組織内照射(イリジウムによる一時留置小線源療法)の2種類を完備しております。明らかな転移を認めない局所前立腺癌であっても、すでに癌病巣が前立腺内で広がり前立腺の被膜外まで達している場合もあります。したがって、リスク分類に応じた治療の使い分けをします。放射線治療の場合は手術とは異なり前立腺を摘出しませんので、癌の正確な広がりについては分からないまま治療が終了します。治療効果もすぐにはわかりません。したがって、最初に正確なリスク分類をして、最も適していると考えられる治療を選択することが大切と考えております。

1.高線量率組織内照射(イリジウムによる一時留置小線源療法)

当院では低〜高リスク群いずれの方も治療可能ですが、後述の低線量率組織内照射単独で治療可能な方は後者をお勧めします。高線量率組織内照射では通常、放射線外照射(IMRT)の併用が必要です。治療スケジュールは通常2泊3日の入院で施行しています。治療そのものは1日で終了します。治療当日朝、腰椎麻酔または全身麻酔下で、治療のための針を会陰部より10数本刺し、その後は刺したままの状態で、安静臥床が約8時間弱必要です。この間に2回、針穴より線源を挿入し、治療を行います。この間はご自身ではほとんど動くことができません(針が曲がったり、抜けたりすると治療困難となるため)。その後、針を抜去し、安静が解除されます。外照射は、通常13回(平日連日照射)2.5週の通院で施行します。 
高線量率組織内照射は現在のところ九州では当院のみで治療可能です。

治療成績(245症例のデータ解析:2017年)


手術症例と全く同じ条件の症例が加療されているわけではないため、治療成績の比較はできませんが、手術療法より劣る治療成績ではないようです。

晩期放射線障害(処置を必要とする合併症)
尿道狭窄 15%弱(尿道拡張または尿道切開施行)
肉眼的血尿 <5%
直腸出血 <5%弱
直腸潰瘍・穿孔は各1例 (<1%)

2.低線量率組織内照射(ヨウ素による永久留置組織内照射)

当院では低リスク群および一部の中リスク群(グリソンスコア3+4かつPSA<10ng/ml)の方が本治療の単独治療の適応と考え、3泊4日の入院で治療しております。上記以外の中リスク群、高リスク群の方はヨウ素による低線量率組織内照射に加え、外照射及び内分泌療法を追加します。入院期間は単独治療と同様ですが、外照射は通常25回(平日連日照射)5週間の通院で施行します。内分泌療法は通常、中リスク群で6ヶ月、高リスク群で2年間施行します。 
治療スケジュールは外来にて治療に先立って経直腸エコーで前立腺の大きさなどを観察し、埋め込む線源の部位、数を予定します。後日、入院の上、全身麻酔または半身麻酔(腰椎または硬膜外麻酔)をかけ、前述のごとく会陰から針を前立腺に刺し、事前に予定した部位に線源を順次留置していきます。治療時間は麻酔時間と合わせて4時間程度です。前立腺の大きさにより異なりますが、数十個の線源を留置することになります。入院は通常3泊4日になります。
治療後1ヶ月後ぐらいにCT などにて線源の挿入状態などチェックします。
当院では本治療に関しては以前ほとんど低リスク群および中リスク群の一部の方のみしか施行していなかったため、症例数は少ないのですが、2020年までの期間で69例中3例のみ再発を認めました。一方、処置を要する重篤な放射線障害は認めておりません。

放射線外照射

当院においては外照射単独治療では小線源療法よりやや根治性が低いと考えられ、手術や内分泌療法などとの集学的治療の一環または手術後再発時の治療として行っています。
ご希望の方は最新鋭の機器での強度変調放射線治療(IMRT)が可能な近隣施設や重粒子線治療が可能な九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)などをご紹介させていただいています。


内分泌療法・抗癌剤化学療法など

前立腺癌の治療」の中で述べましたように根治治療が不可能な進行前立腺癌や高齢者が適応になりますが、希望にて内分泌療法を第一選択とされる方もおられます。

治療を施行せずに経過観察(監視療法・待機療法)

主に低リスク局所前立腺癌の場合はご希望があれば、監視療法として、治療せず経過観察いたします。ただし、定期的なPSAチェック、MRIによる画像検査、初回前立腺癌診断1-2年後に再度前立腺針生検にて癌の病期の進行、癌悪性度の悪化がないかを確認しながら治療介入時期を検討します。
病状悪化まで治療を希望されない待機療法を希望する方は、ご自身が治療希望されるまでは、特に積極的な検査はいたしません。

その他、当院では施行できない治療、先進治療、臨床試験などの希望のある方はご希望の施設をご紹介いたしますので担当医へ申し出ください。