前立腺癌総合治療センター

前立腺の解剖と働き

 前立腺の病気は、近年の高齢化とともに前立腺肥大症および癌といった疾患が増加しており、泌尿器科の扱う臓器の中では、腎臓および膀胱とともに臨床上とても重要です。前立腺は直接目で見えませんし、下腹部(骨盤腔の奥)にあります。直接前立腺を観察するためには直腸より直腸壁越しに指で触ることは可能です。

 解剖学的には、前立腺は膀胱の下にあり、左右の前立腺葉が融合し尿道を取り囲んでおり前立腺部の尿道に分泌腺が開口しています。正常では左右の前立腺葉の接合部はやや窪んでおり触診でよくわかります。形は栗の実のようであり、大きさはだいたい3×4cmで、成人男性で約20g程度です。

 前立腺は男性の生殖器官の一部ですが、精嚢腺とともに外分泌副生殖腺として重要な臓器です。前立腺は生殖能には欠くべからざる重要な臓器で解剖学的に均一な臓器ではなく、大きく3つの領域に区分されています。すなわち辺縁領域、中心領域、そして移行領域から成っています。一般的には肥大症は尿道周囲の移行領域から発生し、癌は主に辺縁領域から発生するとされており、一つの臓器で悪性と良性の腫瘍性病変が異なった部位から発生します。

 前立腺は、その発生と増殖、成長のすべてを男性ホルモンに依存しています。前立腺は男性ホルモンであるテストステロンにより刺激されて発生成長します。しかし去勢されると前立腺は退縮します。また思春期までに去勢されると、前立腺の成長がとまり退縮し前立腺肥大症あるいは、癌などの病気も発生しません。このように、前立腺は男性ホルモンのおかげで存在しているといっても過言でありません。この男性ホルモン依存性を利用して、前立腺肥大症あるいは癌の治療がおこなわれております。

 前立腺の働きは未だ不明なことが多いですが、生殖には欠くべからざる臓器であることに間違いなく、とくに精液の一部をつくっていることはあきらかです。精液の役割には、精子が妊娠させる能力を高めるために、活動力を与え精子を運搬する重要なはたらきがあります。さらに、前立腺特異抗原 (PSA)はこの精液より分離抽出された物質であり、これらの血中濃度を測定することにより前立腺癌の診断に役立っています。