前立腺癌総合治療センター

前立腺全摘術(開腹・腹腔鏡・ロボット支援)

 前立腺と精嚢腺を全部摘出する方法で、摘出後排尿路を確保するため膀胱と尿道をつなぎあわせます。また、骨盤内のリンパ節も同時に切除する場合もあります。摘出して癌の状態を正確に判定できることと、根治治療として長期の実績があります。しかし、術前の検査ではわからないリンパ節の転移が判明したり、前立腺外に顕微鏡的に癌が広がっており手術的に癌が完全に切除できない場合もあります。この場合は下記に記載している内分泌治療や放射線治療を追加しないといけない場合もあります。
 入院期間は特に合併症なく順調に経過すれば、術後8〜10日程度で退院できます。この手術に関わる術中の問題点としては出血と直腸損傷があります。出血に関しては術前に御自身の血液を採取する貯血を行い、手術はこの御自身の血液を輸血する方法(自己血輸血)で対処しますが、出血が多い場合は一般の輸血が必要になることもあります。直腸損傷に関してはまれなことですが(1〜2%前後と報告されていますが、当院では現在まで<1%)、前立腺と直腸の癒着が強い場合に起こることがあります。この場合、直腸を閉鎖するのみで良いことがほとんどですが、場合により一時的に人工肛門をおいて数ヶ月後に再度手術において閉鎖する必要が生じることがあります。術後の合併症としては尿失禁(尿が漏れること)が約70%の方に一時的に起こりますが、その80〜90%の方は3-6ヶ月後には治まります。残りの10〜20%の方はお腹に力を入れた時などに少量の尿漏れが残る場合があり、1日1〜2枚のパッドを必要とする場合があります。1〜2%に前述より程度の強い尿漏れが残ることがあるといわれています。性機能は通常の手術法では消失します。癌の広がりの程度により射精はできませんが、勃起を温存する手術法が可能な場合があります。しかし、この手術法でも性機能が温存できる方は30%程度です。その他、手術における一般的合併症はありえますが、術後の合併症の頻度は少なく、根治治療としては良い治療法と考えられます。一般に余命10年以上ある方にはこの手術療法の適応があるといわれています。
 腹腔鏡下前立腺全摘術は腹腔鏡というカメラを使用して、数カ所の小切開創より内視鏡による拡大視野で、前立腺を摘除する方法です。拡大視野による細かい操作、術中出血の軽減、術後疼痛の軽減がえられますが、開腹術より手術時間が長くかかり、お腹を二酸化炭素で膨らますための合併症などの欠点もあります。


 
ロボット支援前立腺全摘術は腹腔鏡下手術と開腹手術の良いところをあわせもった術式であり、ロボットを利用して術者が遠隔操作で手術を行う方法です。
腹腔鏡下前立腺全摘術は小さな傷で術後疼痛の軽減、より早い社会復帰、拡大視野で手術を行い出血の軽減などが利点ですが、一般に2次元のモニター下で手術をするため立体感がわからず、術者の目となるカメラ操作は助手が行うこと、また、手術操作は自由度の少ない鉗子で手術を行うため難易度の高いことが欠点でした。

▲ダヴィンチSi サージカルシステム


ロボット支援前立腺全摘術は術者個人がカメラ操作を行い拡大3次元ハイビジョン画像下で多関節鉗子が手振れ防止機能にて安定した操作で手術が可能になり、鏡視下手術の欠点を補うことができ、よりスピーディーで安全な手術が可能になります。
▲ペイシェントカートの作動風景
▲術者操作風景