前立腺癌総合治療センター

前立腺全摘術(開腹・腹腔鏡・ロボット支援)

最も標準的な根治治療の1つです。以下の3種の方法があります。
 A) 通常の開腹手術
 B) 腹腔鏡下手術
 C) ロボット支援腹腔鏡下手術
開腹手術の方法は下腹部の真ん中を切開して、腹腔鏡下手術・ロボット支援腹腔鏡下手術は臍部を中心に5-6カ所腹壁に小さな穴を開け、前立腺と精嚢を全て摘除し、摘除後排尿路を確保するため膀胱と尿道をつなぎあわせる手術です。また、骨盤内のリンパ節(癌が微小転移しやすい部位)も同時に切除する場合もあります。
通常、順調に経過すれば術後10日前後には退院できます。


もし、手術中に画像診断ではわからないリンパ節転移が多数存在した場合は後述の内分泌療法(放射線療法を併用する場合もあり)の追加が必要になります。また、術後に再発をきたした場合や摘出標本の結果では術後に放射線療法や内分泌療法の併用が必要になる可能性があります。
腹腔鏡手術の特徴は手術の傷を小さくして痛みを軽減させることや拡大視野で手術を施行し、出血を減らす目的ですが、通常の開腹手術より手術時間が長くなります。
ロボット支援腹腔鏡下手術は腹腔鏡下手術と開腹手術の良いところを合わせた手術で良好な視認性と関節機能を有する鉗子の可動自由性の高さから、縫合操作が容易になり、開腹手術や腹腔鏡手術と同等以上の手術手技が可能です。
手術療法全般の利点欠点については以下に記載します。
【利点】
  1. 根治治療として確実性が高い
  2. 癌の実際の広がり状態を摘出標本にて顕微鏡的に正確に判断できる(微小リンパ節転移を含めて)
  3. 手術後の経過観察がわかりやすい(PSA 測定にて容易に再発がわかり、追加治療の判断がつきやすい)
  4. 万一、再発した場合に治療の選択肢が多い(放射線外照射や内分泌療法など)
  5. 病巣がなくなったという安心感がえられる
  6. 排尿障害(排尿困難などの症状)を有する方は症状が改善される
【欠点】
  1. 一般的な麻酔や術後の合併症のリスク(頻度は高くはあリません)
  2. 周術期出血:輸血が必要になることがあります:ロボット手術の場合は1-2%、開腹手術の場合は輸血率が上がるため、自己血を採取します。
  3. 直腸損傷:直腸に傷がつき、修復が必要なことが極めてまれですが起こりえることです。場合により術中または術後に一時的に人工肛門を造ることが必要になる可能性があります。その際は2−3ヵ月後に人工肛門をなくすために腸をつなぎなおす手術が必要になります。(<1%)
  4. 尿失禁:お腹に力を入れた時に尿が漏れるタイプが最も生じやすく、手術後は失禁の多い方もありますが、筋肉の強化運動などにより術後1年以内で80~90%の方はパッドなし、パッド1枚以内で生活できるようになります(多くは3〜6ヶ月で改善します)。1年以降も高度な尿失禁が残ることが数%あり、その場合は人工括約筋の埋め込み手術(尿漏れ改善の器具)の方法もあります。
  5. 性機能障害:手術後射精はできなくなります。また、勃起に関しても性機能に関連する神経を合併切除するため消失します。病状によっては勃起神経を温存する手術方法もあります。しかし、神経を温存した場合でも勃起可能な方は30~50%程度で、さらに勃起可能になるまで1〜2年を要します。また、ED改善薬の使用で勃起可能になる方もあります。
     当院では基本的にはロボット支援腹腔鏡下手術を行いますが、病状や既往症などの為、開腹術しか施行できない場合もあります。

▲ダヴィンチSi サージカルシステム


▲ペイシェントカートの作動風景
▲術者操作風景