前立腺癌総合治療センター

当院で受けることができる治療法

前立腺癌の根治療法

前立腺癌の根治療法

前立腺全摘術(開腹・腹腔鏡下・ロボット支援下)

手術の利点は、1)前立腺を摘出するので、癌の広がりやリンパ節転移の有無を顕微鏡での組織診断によって正しく知ることができる、2)前立腺を摘出するので、術後にPSAの値は理論上ゼロとなるはずである。したがって、癌細胞の残存や再発がわかりやすい、3)万一再発した場合、その後の治療として放射線治療(外照射)も選択肢にはいる、4)病巣がなくなったという安心感、5)前立腺肥大のある方は前立腺を摘出することにより排尿障害が改善される、などがあげられます。
 通常の開腹前立腺全摘術は臍下から恥骨までの下腹部正中切開で施行します。
 また、腹腔鏡下前立腺全摘術を2012年より導入し、小さな切開創で内視鏡下の拡大視野で手術ができるようになり、術中の出血量の減少などに貢献しています。手術希望の全ての方に腹腔鏡下手術が可能なわけではありませんが、主治医と相談いただき決定しています。
2013年10月にダヴィンチロボットシステムが導入され、ロボット支援前立腺全摘術を開始しました。
当院における前立腺全摘手術のスケジュールと治療成績を示します。
 入院・治療は治療計画書(クリティカルパス)に沿って進行します。手術の約2〜3週間前に外来にて400〜800mlの自己血を貯血します。入院は原則手術予定日の前日、手術後1〜2日目に歩行できます。手術後6日目に尿道のカテーテル(管)を抜きます。手術後9日で退院となります(退院の基準:手術創治癒、身体に合併症なし、排尿に支障なし)。退院後は通常の日常生活が可能です。腹腔鏡下手術・ロボット支援手術は従来の開腹術より術後の痛みが軽度で社会復帰も早いのは事実です。
 近年、手術例数は開腹・腹腔鏡・ロボット支援手術を含めて年間50〜70例施行しています。

手術実績
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
前立腺全摘
開腹 67 64 22 18 7
腹腔鏡下 - 5 16 2 0
ロボット支援下 - - 1 27 49
67 69 39 47 56

リスク分類別の手術単独治療成績(2015年データ解析)


 

小線源療法(組織内照射:ブラキテラピー)

 当院では、前立腺癌の根治的放射線治療装置として、低線量率組織内照射(ヨウ素による永久留置小線源療法)および高線量率組織内照射(イリジウムによる一時留置小線源療法)の2種類を完備しております。明らかな転移を認めない局所前立腺癌であっても、すでに癌病巣が前立腺内で広がり前立腺の被膜外まで達している場合もあります。したがって、生検で癌がみつかった部位(病期)、悪性度(グリーソンスコア)、そしてPSA値から癌病巣の広がりを推定して高リスク群、中リスク群、低リスク群の3つに分け、それに応じた治療の使い分けをします(“治療法の選択に重要な因子”の“D’Amicoのリスク分類”または”治療の選択“の【参考1】を参照ください。放射線治療の場合は手術とは異なり前立腺を摘出しませんので、癌の正確な広がりについては分からないまま治療が終了します。治療効果もすぐにはわかりません。したがって、最初に正確なリスク分類をして、最も適していると考えられる治療を選択することが大切と考えております。

●高線量率組織内照射(イリジウムによる一時留置小線源療法)

 永久留置法と同様の手技で、腰椎麻酔下に会陰部から前立腺に刺した針を通して、短期間に線源を何度か出し入れして照射する方法です。治療終了後は線源が体内に残らないので、ヨウ素より強い放射線を出すイリジウムが使用でき、外照射との併用で前立腺の周囲にも照射することができ、リスクの高い癌でも治療可能と考えられています。治療後の生活上の制約はありません。当院では13日の外照射(1日5~10分程度の治療時間で外来通院でも可能)と2泊3日の入院治療による組織内照射(治療中、約10時間の安静臥床で下半身固定が必要です)で治療を行っております。2013年末までに254例の方に本治療を施行しています。

治療成績(2010年データ解析)

治療後の経過観察は短いですが、治療後の非再発曲線を提示します。



-:低リスク12件-:中リスク65件-:高リスク37件
手術症例と全く同じ条件の症例が加療されているわけではないため、治療成績の比較はできませんが、手術療法より劣る治療成績ではないようです。

晩期放射線障害


   軽度の直腸出血 15%弱
   尿道狭窄 15%弱(尿道拡張または尿道切開施行)
   肉眼的血尿 5%弱
   直腸穿孔は1例

現在は照射線量などの改良にて晩期放射線障害の頻度は減少しています。

低線量率組織内照射(ヨウ素による永久留置小線源療法)

海外で主流となっている治療法で、全身麻酔下に会陰部から前立腺に刺した十数本の針を通して、ヨウ素という弱い放射線を出す小さな線源(長さ約 4.5mm、直径約0.8mmのシード)を数十個から百個近く前立腺組織内に埋め込みます。一度埋め込んだ線源は取り出すことはできません。したがって、治療前に線源を埋め込む場所をあらかじめ決めるための綿密な事前計画が必要です。埋め込んだ線源は長時間放射線を出し続けますので、下記のような生活上の制約があります。 *


  1. 埋め込んだ線源が脱落して体外に出た場合(治療後1年以内)、担当医師に届け出ること
  2. 性交渉は治療後4週間禁止、線源脱落の可能性があるため1年間はコンドーム使用すること
  3. 新生児や妊婦との接触は、治療後2か月間は避けることが望ましい
  4. 万一、治療後1年以内に何らかの原因で死亡した場合は、解剖により前立腺ごと線源を摘出する(解剖のための遺体搬送およびその費用は全てご家族または関係者の負担になります)
  5. 治療後1年間は本治療を受けたことがわかるように患者カードを携行すること


治療成績

当院では低リスク群の患者さんおよび中リスク群の一部の患者さんに限ってヨウ素による密封小線源療法の単独治療を行っています(外照射の併用なし)。治療を開始して現在までの7年間で42例中2例のみ再発を認めました。一方、重篤な放射線障害は認めておりません。

*小線源療法は高線量率組織内照射でも低線量率組織内照射でも、治療を受けるための条件があります。概略は下記に示しますが、詳細は担当医師とご相談ください。
  条件1 治療のための体位がとれる     
  条件2 前立腺肥大症や直腸の手術歴がない
  条件3 重篤な合併症がない         
  条件4 前立腺体積が30cc以下
(前立腺が大きい場合は十分な穿刺ができませんので、事前に3~6ヶ月間内分泌療法を行い、前立腺を縮小させます)

局所前立腺癌に対する放射線根治放射線治療数
2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
HDR-BT 32 30 19 18 19
LDR-BT 6 8 7 2 9
EBRT 4 4 6 2 3
42 42 32 22 31
HDR-BT:高線量率組織内照射
LDR-BT:低線量率組織内照射
EBRT:外照射

放射線治療(外照射)

当院で行われている外照射は前立腺周囲組織への影響を考慮すると単独治療ではやや根治性が低いと考えられ、手術や内分泌療法などとの集学的治療の一環または手術後再発時の治療として行っています。


内分泌療法・抗癌剤化学療法など

「前立腺癌の治療」の中で述べましたように根治治療が不可能な進行前立腺癌や高齢者が適応になりますが、希望にて内分泌療法を第一選択とされる方もおられます。

当院におけるリスク分類別の治療の基本方針

低リスク群:
 1)手術療法*(ロボット支援手術・前立腺全摘術・腹腔鏡下前立腺全摘術)
 2)ヨウ素による低線量率組織内照射
 3)イリジウムによる高線量率組織内照射+外照射
 4)外照射のみ(IMRT、重粒子線療法などは他院紹介)
 5)(内分泌療法)
 6)(無治療経過観察:PSA監視療法)
中リスク群:
 1)手術療法*(ロボット支援手術・前立腺全摘術・腹腔鏡下前立腺全摘術)
 2)ヨウ素による低線量率組織内照射(低リスク群に近い、一部の症例のみ)
 3)イリジウムによる高線量率組織内照射+外照射
 4)外照射のみ(IMRT、重粒子線療法などは他院紹介)
 5)外照射+内分泌療法
高リスク群および局所浸潤癌:
 1)手術療法*(ロボット支援手術・前立腺全摘術・腹腔鏡下前立腺全摘:原則拡大骨盤内リンパ節郭清を同時施行)
 2)骨盤内リンパ節郭清(内視鏡下):(癌の状態によっては施行)→
   イリジウムによる高線量率組織内照射+外照射(+内分泌療法)
 3)内分泌療法+外照射(IMRT、重粒子線療法などは他院紹介)
転移癌
  内分泌療法
  症状がある場合は原因領域への放射線療法などを考慮

以上治療法の説明をいたしましたが、前立腺癌の治療は多岐にわたっており、患者さんのご意向に沿い、最適な治療をご相談のうえ決定したいと考えております。

治療費

 治療費に関しては手術療法、放射線療法のいずれの治療法も若干差はあるものの、入院費含めて実費で100万円超ぐらいです。
内分泌療法はホルモン剤の注射は実費で1ヵ月4−5万円、内服薬もほぼ同様です。
 重粒子線治療やHIFU以外は保険診療ですので、個人の負担額は加入保険によって異なってきます。
 費用の詳細を知りたいかたは当院医療相談窓口でお尋ねください。