疼痛管理・緩和医療マニュアル(Ver.1 2004.2) 緩和医療の考え方当院は急性期の高度専門医療をその主たる診療内容としているが、総合診療施設としてがん末期患者やもはや回復が期待できない患者の皆様の終末期医療への対応も求められる。緩和医療はそのような患者の皆様に対する疼痛管理を含めた心身共の苦痛に対する支援体制である。また一般的な医療における術後の苦痛対策なども緩和医療の範疇に含まれる。疼痛管理の原則患者の皆様の痛みを肉体的疼痛だけでなく、精神的苦痛も含めた“全人的苦痛(total pain)として理解、対処することが必要である。そのためには患者の皆様の観察が重要であり、痛みと直接関係のないような訴えや日常生活動作の小さな変化にも注意を払うことが必要である。ご家族のご協力を仰ぎ、患者の皆様の情報を共有しながら、患者の皆様の自己決定を尊重し、心身共に質の高い療養生活が送れるような配慮と支援が求められる。疼痛管理の基本事項原因の診断原因:
病態:
疼痛緩和の適応と実施
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痛みの評価法 I(VAS)[Visual Analog Scale]右下のような紙に引いた10センチの直線、またはスケールの両端に「痛み無し」と「耐え難い強い痛み」と書き、今の痛みがこの0から10の間のどのくらいに当たるかを、患者自身にしめしてもらう。特徴
その他
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痛みの評価法 II(VRS)[Verbal Rating Score]右の表を示し、患者に自分で思う痛みの程度を指し示してもらう。また、医師や看護師が客観的な評価に使うこともできる。
特徴
(Keele KD: The pain chart, Lancet II:6,1948) |
痛みの評価法 III(Face Scale)[Face Scale]右のような、笑顔から泣き顔までの20個のイラストを示し、現在の痛みがどの顔に相当するかを指し示してもらう。
特徴
(Lorish CD, et al. Arthritis Rheum. 29:906,1986) |
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1.高齢者では薬物代謝の低下と反応性の増大があるため「投与開始量」「投与回数」を少なめにする方が安全である。
モルヒネの副作用対策1.便秘多くの症例に認められるので、モルヒネ投与開始と同時にその予防的投与も検討する。酸化マグネシウム(マグラックス) 1回330-66-mg 1日2-3回 ピコスルファーナトリウム(ラキソベロン) 1回5-20滴 就寝前 センノシド(プルセニド) 1回12-48mg(1-4)錠 就寝前 2.吐気、嘔吐発現率は30%である。中枢への直接作用によるものであるので、末梢作用の強いミトクロプラミド(プリンぺラン)やドンペリドン(ナウゼリン)は効果が弱い。プロクロルペラジン(ノバミン) 1回5mg 一日3-4回 ハロペリドール(セレネース) 1回0.75-1.5mg 就寝前 ペルフェナジン(ピーゼットシー) 1回2-4mg 1日3回 3.眠気メチルフェニデート(リタリン) 1回 10-20mg 1日1回朝または1日2回 朝昼4.せん妄ハロペリドール(セレネース) 内服 1回0.75mg 1日1-3回注射 10-30mg/day 持続皮下注、持続 5.呼吸抑制重篤な呼吸抑制が起こることはほとんど無い。ナロキソン(ナロキソン) 1回 0.2mg 静注、必要であれば1-2回追加する。 |
文献
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