前立腺癌の根治療法
前立腺全摘術
手術の利点は、1)前立腺を摘出するので、癌の広がりやリンパ節転移の有無を顕微鏡での組織診断によって正しく知ることができる、2)前立腺を摘出するので、術後にPSAの値は理論上ゼロとなるはずである。したがって、ガン細胞の残存や再発がわかりやすい、3)万一再発した場合、その後の治療として放射線治療(外照射)も選択肢にはいる、4)病巣がなくなったという安心感、5)前立腺肥大のある方は前立腺を摘出することにより排尿障害が改善される、などがあげられます。
当院における前立腺全摘手術のスケジュールと治療成績を示します。
入院・治療は治療計画書(クリティカルパス)に沿って進行します。手術の約2週間前に外来にて400mlの自己血を貯血します。入院は原則手術予定日の前日、手術後1〜2日目に歩行できます。手術後6日目に尿道のカテーテル(管)を抜きます。手術後9日で退院となります(退院の基準:手術創治癒、身体に合併症なし、排尿に支障なし、尿失禁はないか日常生活に困らない程度)
昨年の手術成績 2009年1月~12月
52名に手術施行
在院日数 10~20日(平均11.7日)
自己血400ml 以外の輸血 1.9%
合併症 重篤なものなし
手術関連死 なし
医療費総額 90~100万円 (健康保険により自己負担額が決まります)
退院後は通常の日常生活が可能です。
小線源療法(組織内照射:ブラキテラピー)
当院では、前立腺癌の根治的放射線治療装置として、密封小線源療法(永久留置法)および高線量率組織内照射(一時留置法)の2種類を完備しております。明らかな転移を認めない局所前立腺癌であっても、すでに癌病巣が前立腺内で広がり前立腺の被膜外まで達している場合もあります。したがって、生検で癌がみつかった部位(病期)、悪性度(グリーソンスコア)、そしてPSA値から癌病巣の広がりを推定して高リスク群、中リスク群、低リスク群の3つに分け、それに応じた治療の使い分けをします(“治療法の選択に重要な因子”の“D’Amicoのリスク分類”または”治療の選択“の【参考1】を参照ください。放射線治療の場合は手術とは異なり前立腺を摘出しませんので、癌の正確な広がりについては分からないまま治療が終了します。治療効果もすぐにはわかりません。したがって、最初に正確なリスク分類をして、最も適していると考えられる治療を選択することが大切と考えております。
●一時留置法(イリジウムによる高線量率組織内照射)
永久留置法と同様の手技で、腰椎麻酔下に会陰部から前立腺に刺した針を通して、短期間に線源を何度か出し入れして照射する方法です。治療終了後は線源が体内に残らないので、ヨウ素より強い放射線を出すイリジウムが使用でき、外照射との併用で前立腺の周囲にも照射することができ、リスクの高い癌でも治療可能と考えられています。治療後の生活上の制約はありません。当院では13〜15日の外照射(1日5~10分程度の治療時間で外来通院でも可能)と2泊3日の入院治療による一時留置法による組織内照射(治療中、約10時間の下半身固定が必要です)で治療を行っております。
治療成績
(2004年5月より2010年3月までの期間に156例施行)
| 治療後の経過観察は短いですが、治療後の非再発曲線を提示します。 |
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-:低リスク、-:中リスク、-:高リスク
手術症例と全く同じ条件の症例が加療されているわけではないため、治療成績の比較はできませんが、手術療法より劣る治療成績ではないようです。 |
晩期放射線障害
軽度の直腸出血 15%弱
尿道狭窄 15%弱(尿道拡張または尿道切開施行)
肉眼的血尿 5%弱
直腸穿孔はなし
つまり放射線照射による重篤な副作用はみられておりません。
●永久留置法(ヨウ素による密封小線源療法)
*現在、機器調整のため当院での本治療は一時中断しております。
海外で主流となっている治療法で、腰椎麻酔下に会陰部から前立腺に刺した十数本の針を通して、ヨウ素という弱い放射線を出す小さな線源(長さ約4.5mm、直径約0.8mmのシード)を数十個から百個近く前立腺組織内に埋め込みます。一度埋め込んだ線源は取り出すことはできません。したがって、治療前に線源を埋め込む場所をあらかじめ決めるための綿密な事前計画が必要です。埋め込んだ線源は長時間放射線を出し続けますので、下記のような生活上の制約があります。 |
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- 埋め込んだ線源が脱落して体外に出た場合(治療後1年以内)、担当医師に届け出ること
- 性交渉は治療後4週間禁止、線源脱落の可能性があるため1年間はコンドーム使用すること
- 新生児や妊婦との接触は、治療後2か月間は避けることが望ましい
- 万一、治療後1年以内に何らかの原因で死亡した場合は、解剖により前立腺ごと線源を摘出する
- 治療後1年間は本治療を受けたことがわかるように患者カードを携行すること
治療成績
当院では低リスク群の患者さんに限ってヨウ素による密封小線源療法の単独治療を行っています(外照射の併用なし)。治療を開始して現在まで3年6ヶ月程度の短い経過観察期間ですが、1例のみ再発を認めました。一方、重篤な放射線障害は認めておりません。
*小線源療法は一時留置法でも永久留置法でも、治療を受けるための条件があります。概略は下記に示しますが、詳細は担当医師とご相談ください。
条件1 治療のための体位がとれる
条件2 前立腺肥大症や直腸の手術歴がない
条件3 重篤な合併症がない
条件4 前立腺体積が30cc以下
(前立腺が大きい場合は十分な穿刺ができませんので、事前に3~6ヶ月間内分泌療法を行い、前立腺を縮小させます)
放射線治療(外照射)
| 当院で行われている外照射は前立腺周囲組織への影響を考慮すると単独治療ではやや根治性が低いと考えられ、手術や内分泌療法などとの集学的治療の一環として行われます。参考までに放射線療法の治療費の概算を示しますが、これはあくまで目安ですので詳細は担当医師とご相談ください。 |
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放射線治療費 概算(患者の皆様の条件、前立腺の大きさ、癌の進行度によっても変わってきます)
外照射のみ(72Gy) 760000 (外来)
外照射+HDRブラキ 310000〜350000 (外来)
420000 (2泊3日入院費)
計730000〜770000
ヨウ素密封小線源のみ 1200000 (3泊4日)
密封線源を70個使用した場合 (健康保険により自己負担額が決まります)
内分泌療法
「前立腺癌の治療」の中で述べましたように一般に根治性は期待できません。治療費の概算を示しますが、詳細は担当医師とご相談ください。
治療費
LH-RHアゴニスト単独 43860~45750×12(1年間)
LH-RH3ヶ月製剤 76880×4(1年間)
抗アンドロゲン剤併用 1年間で 約380000