薬物治療について

薬の種類と薬の作用

まず、お薬の働きかたについて説明します。

人間の細胞もウイルスも総ての生物は、それを増やすことで生命を維持します。増えなければ、それで終わりです。そこで、どのようにして細胞やウイルスが増えるかというと、遺伝子というプログラム(仕様書)に書かれてある通りに増えていきます。つまり、まず遺伝子の複製ができて、新しく出来た遺伝子の命令で細胞やウイルスが形作られていきます。

また、このウイルスの場合は細胞の中で作られて、鎖でつながれていますが、外に出ていくときにこの鎖が切り離さされて、1 ヶ1 ヶの独立したウイルスとなります。この鎖を切り離すのがプロテアーゼという酵素の役目です。だから、このプロテアーゼの役目を果たせないようにするとウイルスは外にでられないままに死んでしまいます。

ウイルスの鋳型を作る働きをするのが逆転写酵素と呼ばれるものであり、この逆転写酵素の働きを妨害するものを逆転写酵素阻害剤といいます。また、プロテアーゼの働きを妨害するお薬をプロテアーゼ阻害剤と呼んでいます。

現在、逆転写酵素阻害剤は遺伝子を形作る核酸に似せたもの(核酸系逆転写酵素阻害剤)と核酸とは全く異なるもの(非核酸系逆転写酵素阻害剤)の2 種類があります。HIV の増殖を十分に阻止するため、増殖する過程の異なる時点で働くこれら数種の薬を組み合わせて治療を行います。

HIVの薬物治療

HIV治療に用いられるお薬は、ウイルスをなんらかの形で人間の体の中で増やすまいとすることを目的としており、高血圧や心臓病などの場合と異なり、症状に応じて使い分けるものではありません。

お薬を飲んだり、飲まなかったりすると、すぐにお薬が効かなくなってしまい(耐性ウイルスの出現)、そのお薬は使用できなくなってしまいます。そればかりか、交叉耐性といって構造が似ている薬や同じ作用をもつ他の薬にも効かなくなることもあります。つまり、使用できる薬の数がさらに減ってしまうことになります。

血中濃度と服薬

決められた時間に決められた量をきちんと服用していくことが治療効果を高めると言われています。これを血液の中にある薬の量(血中濃度)で考えてみます。

図1に示すように薬の量がある量(図の赤の線)以下になると、ウイルスに対する力が弱まり、ウイルスが増えてくることになります。同じ間隔で服用していくと、図2のようにウイルスは減っていきます。

血中濃度と服薬の図

生活のリズムと服薬

では、本当に決められた時間(食後薬や食間薬など)に決められた量を服用することが可能なのでしょうか。

人には人それぞれの生活習慣があり、食事の好みなどがあります。その人の生活パターンを服薬に合わせることは人生をやり直すくらいの厳しい状況になることもあります。このことが薬物治療の難しさと言えるでしょう。

そこで、お薬に関する情報を熟知した上で、お薬を選んでいくことがこの問題を解決をする一つの手段と考えられています。そのために、医療スタッフがお薬に関する情報を患者さんに提供するとともに患者さんの生活状況をお伺いし、患者さんといっしょに薬を選択していくようにしていきます。

なかでも、生活リズムを考えて、服薬時間を決めていくことが必要です。図3に例をあげているように服薬時間がとれる時間帯はいつがあるかを考えてみてください。

1日の生活パターン表

薬の飲み合わせと副作用

お薬を服用すると、小腸のところで体の中に取り込まれて、血液に乗って体の隅々に運ばれます。小腸のところでは、体の中に取り込まれる割合(吸収率と呼んでいるもの)が、薬によっては食事の影響を受けるものがあります。

(食後薬、空腹時薬を間違うと吸収率が下がるなど)最近では栄養補助食品などの成分(グレープフルーツジュース、にんにくエキス、セント・ジョーンズワート/西洋オトギリ草など)の中にも影響を及ぼすものもあることがわかってきていますので、医師に相談して使用しましょう。

また、多くの薬には他の薬と併用することで、お薬の血中濃度に影響を及ぼしたり、思わぬ副作用が出現することがあり、「併用注意薬」「併用禁忌薬」があります。勝手に市販薬を服用しないようにしましょう。

体の中に取り込まれた(吸収された)お薬は、肝臓で解毒され、尿や便と一緒に体外に出されます。薬の飲み合わせ(相互作用)は、肝臓での解毒を遅らせる薬の作用によって起こります。この作用は一つはお薬を飲み過ぎた状態と同じで、中毒を意味します。

当然、副作用が出てくることになります。また、逆にお薬の血中濃度が下がることもあります。その場合、効果があがらないばかりか、中途半端に服用している場合と同じように耐性ウイルスが出現し、薬が使用できなくなることになります。

抗HIV薬Q&A

服用後に吐いてしまいました。どうしたらいいでしょうか?

直後の場合、1時間以上たっての場合など状況によって違いますので医療者にご相談下さい。

海外出張で時差がある場合どうしたらいいのでしょうか?

時差の時間などによって違いますので医療者に事前にご相談下さい。

朝の薬を飲み忘れていたのに気付きました。2回分一度に飲んだらいいでしょうか?

2~3時間後に気付いた場合、半日たって気付いた場合、一日たって気付いた場合など状況によって違いますので医療者にご相談下さい。

市販の風邪薬、ビタミン剤など飲んでいいのでしょうか?

抗HIV薬には併用してはいけない薬剤(いっしょに飲んではいけない薬)や食物などがあります。医療者にご相談下さい。

服用開始してから発疹や頭痛が出現しておかしかったので薬を飲むのをやめて、次の2週間後の受診で先生に言えばいいですか?

即受診が必要です。医療者に連絡して受診しましょう。

食後薬の場合、おにぎり1個でもかまいませんか?

できるだけ油分のあるもの(牛乳1杯、卵1ヶ、おにぎりなら中にシーチキンなど油分のある具材のもの)をとってから

急な出張で薬が今晩から足りなくなりました。どうしたらいいでしょうか?

1回でもきらすことはできません。近くの拠点病院を受診して、薬をもらう必要があります。拠点病院一覧もしくは、当センターの担当医や担当看護師に電話して相談して下さい。

抗HIV薬情報

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薬剤耐性について

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